ヨゴレザメの附属書改正提案
CITES-CoP16にヨゴレザメの附属書改正提案(ブラジル、コロンビア、アメリカ)
翻訳協力:古俣友美子 校正協力:石野精吾
2. 概要
ヨゴレザメ(The oceanic whitetip shark、学名 Carcharhinus longimanus)は、この基準に基づいたリストへの掲載対象となる。いくつかの個体群について、著しい規模の縮小がみられるのがその理由である。世界中に生息するこの種にとっての最大の脅威は、ヒレを国際取引するための捕獲、そして混獲である。ヨゴレザメはサメの中でも、およそ北緯30度から南緯35度の間の熱帯および亜熱帯の海全体を含む最も広い範囲に生息する種の一つで、通常は沖合の遠方で見られる。FAO (Food and Agriculture Organization of the United Nations、国際連合食糧農業機関)が定義しているように、ヨゴレザメは個体数回復の可能性が他のサメ26種と比べて中程度で、個体数の増加率も低い(r<0.14)。環境へのリスクと繁殖性評価から、ヨゴレザメは遠洋漁業の影響の受けやすさで、大西洋に生息する他の12の種のうち5位となった(セクション3.3)。捕獲率データの存在度傾向分析が、いくつかの個体群について規模が大幅に縮小していることを明らかにした。北西、中西大西洋地域では、航海日誌のデータの分析により、1992年から60~70パーセント減少していることが示されている。さらに、1950年代半ばにアメリカで行われた遠洋延縄調査データの標準捕獲率分析、および1990年代後半のメキシコ湾でのアメリカの遠洋延縄監視データでは、この種が4世代にわたって99パーセント減少すると予測した。中央太平洋では、1950年代に始まった遠洋延縄調査のデータと1990年代の監視データの比較研究により、90パーセントのバイオマスの減少が明らかとなった。浮遊物に取りつけた巾着網、固定されていない仕掛け、イルカ用の仕掛けを使った漁によるヨゴレザメの公称捕獲率は、1994年から減少傾向を示している。総合すると、この繁殖性の低い種(r<0.14)は、北西大西洋と中央太平洋で、少なくとも基準値(1950年代)の15~20パーセントまで減少していると思われる(セクション4)。ヨゴレザメは北西、中央大西洋で絶滅危惧ⅠA類、および全世界で絶滅危惧Ⅱ類としてIUCN(International Union for Conservation of Nature and Natural Resource、国際自然保護連合)の絶滅のおそれのある生物種リストに掲載されている。
ヨゴレザメは、マグロとメカジキの漁場で、混獲される熱帯遠海種である。現地の市場では肉も消費されるが、主に利用されるのはそのヒレであり、国際市場における主要製品となっている。主にアデン湾と中央アメリカの太平洋岸に、いくつかの小規模な漁場がある(セクション5)。附属書Ⅱのリストへの掲載は、ヒレの国際取引の持続可能性を規制し、保証することで、これらの動物の野生の個体数によい影響を与える(セクション6)。ヨゴレザメは排他的経済水域内でのサメの漁を禁止するために、パラオ、フランス領ポリネシア、モルディブ、ホンジュラス、バハマ、トケラウ諸島、マーシャル諸島で制定された法律の恩恵を受けることとなる(セクション7)。ICCAT(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas、大西洋マグロ類保存国際委員会)とIATTC (Inter-American Tropical Tuna Commission、全米熱帯マグロ類委員会)は、漁場内でのヨゴレザメの部位、または体全体の船内保管、積み換え、陸揚げ、保存、販売、販売申し出を禁止した。最近では、WCPFC(Western and Central Pacific Fisheries Commission、中西部太平洋マグロ類委員会)が、協定の対象範囲の地域内でのヨゴレザメの船内保管、積み換え、陸揚げを禁止した(セクション8)。 したがって、CITESの附属書Ⅱ、およびそれに関連する捕獲についての法規定の対象となることは、前述の国々、地域で禁止措置を講じている他の国々、および関連するRFMOs(Regional Fisheries Management Organizations、地域漁業管理委員会)の会員となっている国々が、管理のための施策を確実に遵守するのに役立つ。
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