日本がCITES事務局の象牙取引に関するレポートへ異議
「アフリカゾウの今後の象牙取引のための意思決定機構および必要条件」に関し、特定の利害関係者から寄せられた意見
翻訳協力:星野友子 校正協力:松崎由美子
日本
1.日本は、象牙取引を認可する意思決定機構に関する議論の基礎となる最終報告草案の採択および第16回ワシントン条約締約国会議への提出に異議がある。その理由は以下のとおりである。
●当該研究は、持続可能な象牙取引の検討に必要な基礎研究の要件を満たしていない。具体的には、アフリカの象牙貯蔵量の推定、アフリカゾウの生息地数の予測、消費国における象牙の需要の予測と象牙取引がゾウに関する会談に及ぼす影響、地域社会の保護と開発プログラムなどに関する研究が不十分である、あるいは実行されていない。
●最終報告草案の英語版19ページに「1999年および2008年の一回限りの象牙販売による収益を調査した結果、生息国は、通常の取引条件であれば期待できた価格に比べ、66~75%の損失であったという結論に至った」との記述がある。しかしこれは、すべての一回限りの象牙の販売に参加してきた日本の経験とは逆である。一回限りの象牙の販売価格は、1999年は通常と同程度、そして2008年は50%上昇したと認識している。
●象牙取引を認可する意思決定機構の構築を検討するにあたり、象牙取引の包括的な研究が実施されるべきであると考える。したがって、ワシントン条約附属書Ⅱに関する検討と、ゾウの個体群をワシントン条約附属書Ⅰから附属書Ⅱに格下げする検討を同時に行う必要がある。
●日本は、最終報告草案がTOR(考慮事項)に示された要件の中でも高額商品の取引に偏重しているうえに、ダイヤモンド売買の取引機構を象牙の取引に適用して、その理由について納得のいく説明がなされていないと考えている。当該研究がこのような想定で述べられていることは適切ではないと思われる。
2.日本は次の見解をSC62(第62回ワシントン条約常設委員会)の会期中に行われる発表および質疑応答に付け加える所存である。
●当該研究を実施したコンサルタントグループは、本草案が決議14.77に基づく考慮事項を満たしていないというさまざまな意見が締約国から寄せられたにもかかわらず、具体的な回答をまったく示さなかった。
●当該研究を実施したコンサルタントグループは、前述の一回限りの象牙取引に関する日本の疑問に対し、いかなる見解も示さなかった。
●持続可能な象牙取引という目標と、これを達成するのに必要な組織としてのCISO(Central Ivory Selling Organisation)の設立との関連性について妥当な説明がなかった。
以上の理由によって、日本は、この最終報告書草案に含まれるデータおよび証拠は信頼性に欠けるものであると主張する。
3.最後に、日本は、CoP16(第16回締約国会議)で常設委員会のメンバーが象牙取引認可のプロセスとなる意思決定機構の承認を求める決議14.77の再審議を行うこと、および、本件に関する結論の期限をCoP16以降に延期することを提案したい。意思決定機構の今後の議論と過程に関しては、今回の事例から得られた教訓と反省を踏まえ、作業部会を設立し、協議を完全にコンサルタントに任せる前に常設委員会のメンバーがこの件について最初に議論すべきである。
参考)2009年の「一度限りの在庫象牙取引」について JWCS通信No.59 2009
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