「Rhino under threat(危機に瀕するサイ)」映画プレミア【リオ】
2012年6月18日 IUCN Article
翻訳協力:岩田隆志 校正協力:石野精吾
UNTV (The United Nations TV「国連テレビ」)とCITES(The Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」通称「ワシントン条約」)が、リオ + 20(国連持続可能な開発会議)で映画「Rhino under threat(危機に瀕するサイ)」を発表した。
映画は、南アフリカとスワジランドの広大な公園から、ベトナム、ハノイの雑踏にかけての、現在のサイの違法な殺戮の突出した残忍さと、地域社会に与える影響を映している。
何がアジアでのサイの角の需要を引き起こしているのかということ、そして、この犯罪と戦うために国内当局がとっている強力な対策についても、映画は探求している。UNTVは南アフリカの環境犯罪調査と、航空事業、ハノイの闇市場への独占取材に成功した。
2007年、密猟者は南アフリカで13頭のサイを殺戮した。2011年にはこの数が448頭にものぼり、今年は現在までに245頭のサイが殺戮され、161人が逮捕されている。
CITES/UNTVの映画「Rhino under threat(危機に瀕するサイ)」は、野生生物犯罪のシンジケートの役割と、現場での困難な組織的強制対応から、DNA技術の使用、効果的切迫、厳しい罰則の必要性といったものを見せる。
「現在の違法な殺戮傾向が続くならば、私たちはこの象徴的生物種である野生のサイを絶滅に追いやるでしょう」とJohn E. Scanlon氏(CITES事務総長)は言った。「私たちは、密猟、密輸、消費を止めるために、国家的及び国際的なレベルで協力する必要があります。それは難しいことですが、もしそれが出来れば、この戦いに勝つでしょう」と彼は付け加えた。
「サイの保護における成功の秘訣は、政治的意思を機能させること、最大限の現場努力の他に、知力を集めることにあります。今日、私たちが更なる努力をする必要があることは明白です。よって、IUCN(国際自然保護連合)は、野生のサイの将来の生存を確かなものにするために、生息域、保護団体、CITES及びそのパートナーをサポートする準備が出来ています。」とIUCN会長Julia Marton-Lefèvre氏は言った。
「アフリカとアジアの政府が、法の執行、起訴及び需要の縮小を優先するならば、ここ近年高まるサイの密猟を減少させることができます。違法な野生生物取引は、国家の保安と人々の安全を危険にさらす重大犯罪です。サイの将来の安全確保のために、近年サイの角が一番集まるベトナムがリーダーシップを取る必要があります」とJim Leape氏(WWFインターナショナル会長)が言った。
サイに重点を置いた法医学ベーステクノロジーにより保全された、南アフリカ保護区での法的処置能力を強化するためにGEF(地球環境ファシリティ)が出資したプロジェクトが、最近、承認された。GEF基金が、専用の法医学研究所のために、南アフリカ政府によって使用される。この研究所は、野生生物犯罪訴訟での法医学的証拠となるDNA鑑定を適時行い、国と地域の全ての法的執行者及び、密猟に対し取り組んでいる関係者間の、既存の調整と情報共有を強化する。GEF サイプロジェクトの承認についてのコメントとして、Monique Barbut氏(GEF最高経営責任者兼議長)が「絶滅危惧種の密猟は、世界の生物多様性に対する深刻な脅威であり、あらゆる手段(地域社会とのより良い関わり、保護区管理の改善、密猟者を捕らえる最新のテクノロジー)を私たちの意のままに展開することを保証します」と宣言した。「GEFは、サイの保護のために、CITESと南アフリカ政府とともに働けて、嬉しく思います」と彼女は付け加えた。
サイは、非常に利益をもたらすものの、不明なところが多い市場に供給するために密猟される。入手可能な情報に基づくと、サイの角の需要は主にアジア、主要目的地ベトナムからくるようである。CITES事務局に委任されたレポートによると、需要レベルの上昇は、ガンに効くという噂、男性の性的パフォーマンスを向上させる娯楽薬(例えば『サイ・ワイン』)として使用されることが増えた、そして、二日酔いや、食料、薬、アルコールの過剰摂取による悪影響の治療のためとのことだが、これら用途の全てが、伝統医学では認められていない。
また博物館、オークションハウス、骨董店、剥製店からのサイの角の窃盗が、欧州連合で発生している。2011年以降、欧州警察組織は、56件の窃盗と10件の窃盗未遂を記録した。目的の為に脅しや暴力を行使することで有名な組織化された犯罪グループと通じている思われる多くの窃盗団は、15カ国の博物館や個人のコレクションからサイの角を盗み出した。このグループは、アジア、北アメリカ、南アメリカをヨーロッパで活動していると考えられている。
アメリカ合衆国では、複数機関が絶滅危惧種のサイの角の闇市場取引を調査、起訴するために尽力している「壊滅作戦」により、2012年2月に7人が絶滅危惧種のクロサイの角の密売の罪により逮捕された。
南アフリカでは、サイの角をモザンビークやベトナムから国外へ密輸しようとした人間が捕らえられ、これら違法な野生生物取引に従事しようとする人間たちに強力に訴えるよう、長い禁固刑が言い渡された。これら有罪判決は、南アフリカの犯罪者に裁きを受けさせる全ての機構の取締官、検察官や裁判官の共同努力によるものである。サイ密猟とサイの角の窃盗の増加レベルに対し良く練られた法的措置、また、高レベルの政治的対応が、いくつかの大陸に影響を与えていることは明白であり、この問題に対しての効果的な対処法が必要になるだろう。
サイについて
サイは5種類いる。全てワシントン条約附属書に含まれる。ジャワ、スマトラ島及びインドのサイはアジアで発見され、ワシントン条約附属書Ⅰにリストされている。
始めの2種類はIUCNレッドリストの絶滅危惧IA類、インドのサイは絶滅危惧種Ⅱ類とされている。ベトナムのジャワサイ亜種は、2011年10月25日にWWF(世界自然保護基金)によって絶滅したと宣言された。ジャワの少数個体はインドネシアに存在し、Susilo Bambang Yudhoyonoインドネシア大統領による、2012年6月5日をサイ国際年の始まりとする宣言を促した。
野生のクロサイの数は5000頭、シロサイの数は20000頭と推定されている。両方ともアフリカで発見され、それらの生息域と頭数は過去、非常に減少した。間もなく、ワシントン条約附属書Ⅱにリストされたシロサイの個体数は回復したが(とくにアフリカ南部)、ここ数年の新しい密猟の波が、この回復に対する重大な脅威をもたらしている。西部のクロサイは2011年11月に絶滅したとも宣言されている。
http://www.iucn.org/news_homepage/?10174/Rhino-under-threat-film-premiere-in-Rio
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