傷ついたジュゴンを救う、十分な法的措置の必要性
2012年5月23日 IUCN News story
翻訳協力:鳥取 薫子 校正協力:神田 美恵
世界で最も絶滅の危機に瀕している海洋哺乳類の一種、ジュゴン(学名:Dugong dugon)を保護するためには、法的な取締りを行うことが重要である。SOS(Save Our Species)が資金援助したあるプロジェクトが、モザンビークでジュゴンの保護活動に当たっている。
ジュゴンは、絶滅の恐れのある生物種のリスト(IUCN Red List of Threatened Species)において絶滅危惧Ⅱ類(Vulnerable)に分類されており、個体群は過去60年間で30%減少している。性質のおとなしいジュゴンを脅かす脅威のひとつである刺し網による混獲を減らすためには、非合法な漁業を適正に処罰することが非常に重要である。
東アフリカにおけるジュゴンの最新生息頭数は、モザンビークのBazaruto ArchipelagoNational Park(バザルート諸島国立公園)で確認されたおよそ200頭とされる。個体群は地理的に孤立しており、依然として刺し網による混獲や生息地破壊の脅威にさらされている。
最近、数回のパトロール中に、国立公園の法執行官たちが無人の刺し網2件を撤去し、特別保護区内で混獲している一団からリーフフィッシングギアを押収した。
「バザルートのジュゴンを脅かす最大の脅威が緩和されないと、早ければ40年後にも絶滅する可能性があります」Dugong project leader、Karen Allen氏は語る。「効果的なパートナーシップと、トップダウン式だけでなくボトムアップ式の保全方法も採用することで、バザルートのジュゴンは生き残る望みがあるのです」
意図的な乱獲とともに、小規模な刺し網漁業で捕獲されるという偶発的な事象(混獲)によっても、モザンビークの至るところでジュゴンの生息頭数は減少している。かつては多くのジュゴンが生息していた地域においても、局地的な絶滅が起きているのだ。
IUCN(国際自然保護連合)のメンバー組織である南アフリカのEndangered Wildlife Trust(EWT:絶滅危惧野生生物トラスト)は、SOSの支援を得て、改正後の法執行戦略の策定を行うことや国立公園の保全を強化する体制を確立することができている。
また、SOSの支援で法執行に使用する重要な設備を購入することができた。この設備は、ジュゴンプログラムが空中査察やモニタリングを行うことへさらに多くの出資を募るのに役立つことだろう。これで国立公園や特別保護区を定期的に監視することが可能となる。空中査察は法執行を行う上での追加支援と、ジュゴンの最新の調査や分布データの収集を兼ねるものである。
国立公園の法執行官に保全管理の技能を伝達することで、ジュゴンプログラムの長期にわたる成功を揺るぎないものにすることが期待されている。
http://www.iucn.org/news_homepage/?9990/Full-force-of-the-law-needed-to-save-stricken-dugongs
« 「Rhino under threat(危機に瀕するサイ)」映画プレミア【リオ】 | トップページ | 衝撃的な新発見から20年 今もなお神秘のヴェールに包まれるサオラ »
「22 アフリカ」カテゴリの記事
- ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト(2021.10.19)
- コロナ禍でのトロフィー・ハンティングの禁止がアフリカの野生動物と人々の生計を脅かす(2021.08.31)
- ボツワナでゾウ狩りライセンスのオークションが開始される(2021.01.15)
- 9.5tものセンザンコウのうろこの押収により、野生生物犯罪への対応強化がナイジェリアで必至に(2020.10.20)
- 保護区域周辺の人間と野生動物の対立を緩和するための地域密着型の戦略の実験的調査(2020.07.07)
「35 レッドリスト 絶滅危惧種」カテゴリの記事
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
「17 海洋生物」カテゴリの記事
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- ガラパゴス諸島の貴重な海洋生物を中国の巨大漁船団からどのように守るか(2021.09.21)
- 増大する中国漁船団により世界の海洋資源が枯渇(2021.09.14)
- ウミガメと陸ガメの受難(2021.08.10)
- 国際的規制当局の世界最大のマグロの売り尽くし方(2021.07.20)
「12 哺乳類」カテゴリの記事
- Covid-19によりコウモリと疾病論争が再燃(2022.03.22)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト(2021.10.19)
この記事へのコメントは終了しました。
« 「Rhino under threat(危機に瀕するサイ)」映画プレミア【リオ】 | トップページ | 衝撃的な新発見から20年 今もなお神秘のヴェールに包まれるサオラ »
コメント