世界遺産-危機にさらされる将来?
翻訳協力:島田 真理子、校正協力:松崎 由美子
2012年7月6日 IUCN News Story
2012年7月6日 St.Petersburg, Russia(サンクトペテルブルグ:ロシア)、IUCN(国際自然保護連合)
-IUCNの専門家によれば、世界遺産リストに登録されるすばらしい自然遺産の数が増え続ける一方で、あまりにも多くの地域が、適切な管理や登録される理由となった価値そのものを保護するための資金がほとんどない状態で放置されているという。その多くは度重なる脅威、とりわけ採鉱と石油探査による脅威に直面している。
アフリカの自然遺産地域は特に危機にさらされている。西アフリカおよび中央アフリカでは自然遺産の60パーセントを超える地域が危機遺産リストに登録されており、これら昔ながらの自然が残る地域の4分の1が採鉱や石油・天然ガス事業計画の脅威にさらされている。この中にはコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園(Virunga National Park)も含まれている。同国立公園には、地球上に最後に残ったマウンテンゴリラの多くが生息している。
これらの地域は治安状況が不安定なため管理が非常に困難になっている。ヴィルンガ国立公園では1996年以降130名を超えるレンジャーが殺害されている。最近ではAK47ライフル銃で武装した密猟者が隣接する世界遺産地域であるオカピ野生生物保護区(the Okapi Wildlife Reserve)を襲撃し7名の命を奪ったが、その中には2名のレンジャーが含まれていた。UNESCO(ユネスコ:国際連合教育科学文化機関)は緊急アピールを開始し、7月20日までに12万米ドル(約938万4000円:1米ドル=78.2円、2012年8月13日現在)を集めて犠牲者の家族を援助し保護区を支援しようとしている(www.justgiving.com/okapi)。
World Heritage Conservation 委員のMariam Kenza Ali氏は、こう述べている。「IUCNは、これらの人々が殺害されて深い悲しみに沈んでいます。オカピ野生生物保護区が緊急援助を受けなければ、殺人犯の密猟者たちは我が物顔でコンゴ民主共和国内の残りのマルミミゾウのほとんどを虐殺し、地域社会を恐怖に陥れることでしょう。」
IUCNが危機遺産リストに加えるよう推薦した4つの自然遺産のいずれもまだ登録されていない。この点をIUCNは保護の深刻な妨げと見ている。
IUCNは自然遺産に関する公式の諮問機関であり、ケニアのトゥルカナ湖国立公園群(Lake Turkana National Parks)、カメルーンのジャー動物保護区(Dja Faunal Reserve)、ロシアのコミ原生林(Virgin Komi Forests)、セントルシアのピトンズ・マネジメント・エリア(Pitons Management Area)を危機遺産リストに加えるべきだと提案していた。ユネスコの世界遺産委員会はこれら4つの提案をすべて却下したのである。
すばらしい自然が残る6つの地域が、IUCNの助言を受けてユネスコ世界遺産委員会年次総会で世界遺産に指定され、総会は本日、サンクトペテルブルグで閉幕した。
カメルーン、中央アフリカ共和国およびコンゴ共和国に広がるサンガ国立公園群(Sangha Trinational)、チャドのウニアンガ湖水群(Lakes of Ounianga)、パラオのロックアイランド南部のラグーン(Rock Islands Southern Lagoon)、中国の澄江(チェンジャン)化石地域(Chengjiang fossil site)が世界遺産リストに登録された。ロシアのレナ石柱自然公園(Lena Pillars Nature Park)とインドの西ガーツ山脈(Western Ghats)もまた21カ国の代表からなる世界遺産委員会によって名誉あるリストに加えられた。
IUCNの世界遺産プログラム委員長Tim Badman氏は、こう述べている。「この動きによって、その保護が深刻な脅威に直面している地球上のすばらしい自然のために国際的支援が結集されるべきです。私たちの地球の最も大切な自然が残る地域の未来を守り、そこからもたらされる清浄な空気、水、生計手段を含めた生命を維持する自然のサービスを守るためには、国際的な取組みが不可欠なのです。」
http://www.iucn.org/news_homepage/?10406/World-Heritage---a-future-at-risk
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