伝承のカバを守れ
2012年1月1日 IUCN News Story
翻訳協力:星野 友子 校正協力:加藤哲子
西アフリカのジャングルに生息するコビトカバを絶滅から救うため、SOS(Save Our Species)の資金による保護プロジェクトをとおし、その謎に包まれた生態が明らかになりつつある。
コビトカバの生態はあまり知られていないため、1800年代半ばまで西洋の動物学者たちは架空の生物だと考えていた。現在、残存数は3,000頭未満と考えられており、リベリア、シエラレオネ、コートジボワール、そしてギニアの森林に分散している。生息地の消滅と狩猟により個体数は減少している。
森の伝承
近似種である大型の一般的なカバが群れで生活するのとは異なり、コビトカバは川や沼で大きな群れを作らず単独で生活するのが普通で、民間伝承と結びついている。ある伝承では、コビトカバは夜になると口にくわえたダイヤモンドの光で森の道を照らして歩き、昼間はそのダイヤモンドを隠すと言われており、幸運にも夜間にコビトカバを捕まえたハンターはそのダイヤモンドを持ち帰れると信じられている。
IUCN(国際自然保護連合)をパートナーとするSOS(Save Our Species)プログラムが支援するプロジェクトにより、地域中の自然保護活動家が連携して網の目のように配置された隠しカメラでコビトカバの所在を確認し、地元村民と協力してこの動物を重点的に保護するエリアの特定を目指している。この種を保護するため、コビトカバ保護の指針がIUCNのカバスペシャリストグループ(Hippo Specialist Group)とロンドン動物協会(ZSL:Zoological Society of London)の主導により策定され、西アフリカの政府機関や大学のほか、、地元NGOと国際的なNGOにより支援されている。
シエラレオネのNjala University(ジャラ大学)とZSLの科学者はシエラレオネで全国的なアセスメントを行い、コビトカバが見られる場所を確認している。このアセスメントではコビトカバ分布の可能性のある7万平方キロメートルを超える地域が対象となる予定で、優先的に保護に取り組むべき場所の特定に役立つだろう。
地元の援助
2010年12月、シエラレオネ北部のLoma Mountain(ロマ山)山麓の水路でコビトカバの個体群が新たに確認された。おそらくこれは、Gola Forests(ゴラ森林)外で発見されたものでは、シエラレオネで最も大きな個体群である。プロジェクトに取り組むため、狩りに替わる収入を支給して、地元の村から数人の元ハンターを雇った。地域社会の取り組みと認識が進展しつつあり、またカメラトラップ(自動撮影装置)やその他の調査技術を用いて、この個体群の頭数や規模の確認が現在行われている。
Loma Mountain周辺のある地域社会では、コビトカバの狩猟を行わないことを固く取り決め、またコビトカバが最も多く見られる地域では、いかなる種も狩らないことを決めた。
「これは非常に大きな成果ですが、第一歩に過ぎません」と、西アフリカにおけるZSLの保護活動のプログラムマネージャー、Chris Ransom氏は述べている。「同地域で長期的に飛躍的な成果をあげるには、これらの問題への取り組みを継続する必要があります」。
コビトカバの運命は森林の運命と一心同体である。コビトカバの未来を守ることは、マルミミゾウ、ニシチンパンジー、リベリアマングース、ソメワケダイカー(Jentink’s duiker)をはじめとする森に住む他の多くの種を守ることと切り離して考えることはできない。
http://www.iucn.org/what/tpas/biodiversity/resources/news/?8893/Out-of-sight-not-out-of-mind
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