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2012年4月30日 (月)

漁師自身が漁獲量の管理をするという漁業の新たな取り組み(前編)

2011年1月31日:報告書 YALE environment360

翻訳協力:柳川さやか  校正協力:松崎由美子

漁業の復活に向けてますます成果を上げている方法は、漁師に自らの漁獲量を管理させるという、直観的には分かりにくい考えに基づいている。この動きは拡大しつつあるものの、その成功は、漁師だけでなく海産資源そのものを見据える有力なリーダーの存在にかかっている。
Bruce Barcott記

1970年代初頭にこの動きは始まったが、当時南カルフォルニアのウニ漁業には制限が設けられておらず、だれでも自由に漁ができた。州の海洋管理官は、ウニはエサである沖のコンブ床にとって脅威となる厄介なものと考えていたため、ダイバーたちは制限なくウニを捕獲することが許されていた。日本の力強い経済力を背景に、ウニ市場は盛況だった。バターのような甘味のある生殖腺が寿司愛好家に好まれているためだ。当時土木技師であったPeter Halmayのように、ウニ漁の実入りの良さに惹かれ、本業をなげうってウニ漁専従のダイバーになるものもいた。

「熊手とバケツを持って潜る、そして手で一つずつ取ります」とサンディエゴにある古いロブスター用ボートから海に飛び込んだHalmayはいう。「世界一クリーンな漁業です。混獲はゼロですから。」

採り放題の影響はあまりにも大きすぎた。1990年代までにウニの個体数は75%減少し、数が安定する兆しも見えなかった。州政府はウニの漁獲許可数を制限したが、それでも個体数は減っていった。そのためHalmayは仲間のダイバーたちに働きかけ、独自に制限を設ける合意を取り付けた。「私たちが最小限の制限を決めなければウニを取りつくしてしまうことになると気づいたんです」と彼は思い起こす。

「共同管理漁業を成功させるためには共同体のリーダーがなにより重要な要因を担っています」とある専門家は言う。
今日、サンディエゴのウニ漁業は、アメリカで共同管理の維持にもっとも成功している漁業のひとつである。共同管理とはその名のとおり、現地のダイバーと州役人が協力して制限を決め、その大部分においてダイバー同士で違反を取りしまるものである。過去20年間に、共同管理漁業は海洋保全と漁獲割当てを共に行うことで、世界中の海洋生態系の衰退をくい止める、もっとも期待できる対策のひとつとして浮上してきた。少なくとも211の共同管理漁業が現在世界中に存在しており、その範囲は、一千億円規模のアラスカ・ベーリング海のタラ漁業から、チリ沿岸のアワビ漁などの零細漁業におよんでいる。

共同管理漁業の成功と失敗を分けるものは何だろうか?それは厳しい監視でも法執行でも過酷な罰でもない。それはPeter Halmayという人、いやもっと厳密にいえば彼の果たした役割である。

Nature誌に今月初めに掲載されたワシントン大学の研究によると、世界の130の共同管理漁業を分析し、成功と失敗を分けた要因を探ったところ、第一番目の要因は、Peter Halmayのような強く論理的な共同体のリーダーの存在であった。

「共同体のリーダーはただ単に大切、などというものではありません。共同管理漁業を成功させるための突出して一番重要な要因です」と、この調査の研究主任Nicolás Gutiérrezは言う。共同体のリーダーはたいてい漁師のなかから出ている。Peter Halmayのように、仲間や競合相手からも尊敬を集め、漁業に継続的に関係を持ち、しかも自分の立場を利用して私腹を肥やすことのない人物である。「仲間からの信頼は決定的に重要です」とGutiérrezは言う。「リーダーのいる漁場の存在はいくつか確認してきましたが、自己の利益に突き動かされているものがほとんどで、それでは効果が上がらないのです。」

驚くべきことに、通常政府の役人による地元政府の支援は、共同管理漁業を成功させる要因として重要性が最も低いもののひとつであった。「多くの国で、中央政府は漁業管理に必要な手腕も効果的な統治力も持っておらず、海域で実際起きていることに対してほとんどなんの効果ももたらすことができません」とワシントン大学水産資源学教授のRay Hilbornは述べる。Gutiérrezとウルグアイ国家漁業管理プログラムの科学コーディネーターであるOmar Defeoとともに報告書を作成した教授である。「インドネシアのような場所では、政府によるトップダウン方式の管理は無力に等しいのです。共同体中心に行われる管理が唯一現実的な選択肢なのです」と彼は言う。

アメリカ合衆国やヨーロッパなどの最大級の大規模漁業では、オブザーバを雇い漁獲量の監視をさせている。しかしこれら先進国でさえ、政府機関には南カリフォルニアのウニ漁などの小さな活動を監視する資金がない。それができるのは漁師自身でしかない。そして漁師の合意を得るにはPeter Halmayのような人物が漁師を統率することが必要なのだ。

「Gutiérrezの研究が重要であるのは、理論が先行していた多くのアイディアを実際に検証しているからです」と言うのは、漁業エコノミストで、モンタナを拠点とするPERC(Property and Environment Research Center)の上級研究員Donald Lealである。Lealは世界銀行と協力して、発展途上国での持続可能な漁業プロジェクトに取り組んでいる。Lealによると、とくにこの新しい研究はインディアナ大学の政治学者、Elinor Ostromの研究を支持するものであるという。Ostromは、資産を共有するグループが『共有地(コモンズ)の悲劇』に陥ることなく、いかにして資産を自ら管理することができるかを示した研究で、2009年にノーベル経済学賞を受賞している。この共有地の悲劇は1968年のScience誌に掲載されたGarrett Hardinの有名な論文の中で述べられており、共有資源を利用する個人やグループは、自己の利益を求める結果、最終的にその資源を使い果たしてしまうことになるという説である。

共同管理では、生涯の競合者と手を組み信頼しあう必要がある
Ostromの研究以前は、経済学者の多くが、共有資源は民営化するか、政府の上からの管理によってしか解決できない問題だと考えていた。1990年の著書「共有地の管理(Governing the Commons)」の中で、Ostromは第三の方法を示す実例を提示した。それは自己管理されている事業体、例えば、漁師、農民あるいは牧畜業者らの集団が、自発的に自らを管理することで短期間の犠牲を分かち合い、共有資源の持続可能な管理によってもたらされる長期間の利益を手にするというものである。

法律事務所を考えてみるといい、とOstromは言う。個々のパートナーは各自仕事をするが、事務所全体の成功報酬を分かち合っている。このような「私的なよう」でもあり「公的なよう」でもある団体は簡単に分類することができないうえ、それぞれが、地元独自の環境や経済的、社会的、政治的状況から発展してきたものであるという。過去20年間Ostromの説は、世界中で海洋生態系の破壊を招く乱獲を必死に食い止めようとしてきた漁業の為政者に受け入れられてきた。

「業績不振の漁業を救うためには必要な変化を取り入れなければなりません。私たちが長年取り組んでいる課題のひとつは、それをどうやって当事者に動機づけるかということなのです」とLealは言う。「Elinor Ostromは漁業と他の自然資源の現場を調べ、共通の特徴を導き出しました。そこから彼女のいう永続的なシステムを見出したのです」と言う。つまり、持続可能な繁栄する共有地のことだ。Gutiérrezの研究は、Lealの言う『アクチュエータ』つまり『漁師たちに変化を受け入れるよう動機づけを行えるような尊敬されるリーダー』の重要性を強調している点で、Ostromの研究を下敷きにしたものであるとLealは言う。

Ostrom自身は、Gutiérrezの見解に励まされたと言っている。「信頼、コミュニケーション、責任感、リーダーへの尊敬が、共同管理漁業を成功させる上で最も大切な要因だという研究結果を知ったときは感動しました」と最近彼女は言っている。漁業文化はこれまで長く独立と秘密と競争が重要とされてきた。共同管理手法は長年の競争相手と協力し信頼し合わねばならない。「この状況は皆が土曜の晩餐に集い、問題を解決するというようなものではありません」とOstromはつけ加える。「とても複雑で時間がかかります。他の漁師を信頼しなければなりません。だからこそリーダーの存在がとても重要なのです。現場での既存問題を解決することで信頼や社会的ネットワークを築くことのできる人物を探さねばなりません。」

http://e360.yale.edu/feature/in_novel_approach_to_fisheries_fishermen_manage_the_catch/2365/

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