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2012年4月30日 (月)

石灰岩の採石作業によりシルバーラングールは住みかを失う―ベトナム

翻訳協力:山田尚子  校正協力:大前留奈

トイチェー紙(Tuoi Tre)2011年12月12日版など複数の新聞に掲載された最新記事で、ベトナムのキエンザン省キエンルオン郡(Kien Giang, Kien Luong)にあるカルスト台地に生息するシルバーラングール(Silvered Langur, Trachypithecus germaini)の個体数に注目が集まった。トイチェー紙によれば、シルバーラングールは生息地の減少や狩猟圧などにより、過去36年間(1世代を12年とし、3世代)で生息数が半数以下に激減してしまったため(http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/39874/0)、国際自然保護連合(The International Union of Conservation of Nature; IUCN)により絶滅危惧Ⅰ類(Endangered)に指定されている。記事はまた、キエンルオン郡カルスト台地特有の生物学的多様性についても詳しく紹介している。

 2008年以降、Holcim Vietnam Limited(HVL)はIUCNと協同し、キエンルオン郡のHon Chong にあるHVLの採石場において、作業による自然環境への影響を軽減する取り組みを実施した。この取り組みでは熱帯生物学研究所(Institute of Tropical Biology; ITB)の一部である生物多様性開発センター(Center for Biodiversity and Development; CBD)に資金を提供することで、周辺地域のシルバーラングールの個体数を調査し、HVLをはじめ、国有会社も含む全てのセメント会社による現行および実施計画中の採石作業からシルバーラングールを保護する手段を講じる。このCBDの調査により、ラングールの個体生息分布の詳細を明らかにし、確実な保護対策をとることが可能になる。

 しかし、こうした生態保護の重要性を大きくアピールする一方で、トイチェー紙のいくつかの記事では説明が不十分であることから誤解を招くような内容も見受けられる。正しい理解を促進するためにも、ここで下記のような点に注目して補足しておく。

 まず1点目は、2006年から2010年にかけてBai Voi西側エリアで行われたHVLの採石作業では、カルスト台地北側エリア(Mo Soと呼ばれる)に生息するシルバーラングール28頭に直接的な影響はなかったことである。さらに2010年に開始したBai Voi西側エリアを南下していく採石作業でも、とくに深刻な影響はなかったと考えられる。

 2点目は、CBDの調査結果に応じて、HVLはシルバーラングール48頭が生息するKhoe La北側エリアの採石作業のペースダウンを図ったことだ。しかし30頭が生息する南側エリアについては、Tien II cement companyが採石作業を行っており、これによってラングールが将来南下移動すると見込まれるルートである、Khoe La 北側エリアからBa Tai へと南下するマングローブベルト地帯を遮断してしまう恐れがある。これに対しCBDは、キエンザン省の地方省天然資源環境部(Department Of Natural Resources and Environment; DONRE)に報告したが、現在のところ何の対策も取られていない。

 3点目は、見込まれるシルバーラングールのBai Taiへの南下移動を補助する活動として、HVLがマングローブベルト地帯の植林を行っていることである。しかし、農業農村開発局 (Department of Agriculture and Rural Development; DARD)のプロジェクトである、エビ養殖池の建設に際するマングローブの伐採がこれを阻んでいる。このあたりのマングローブベルトの規模は幅30メートルと小さく、ほとんどが若木であることから、ラングールの生息地には適していない。

 最後に、記事によると、キエンザン省人民委員会(Provincial People's Committee; PPC)は、キエンルオンに残されているカルスト台地を守るため、DONREに自然保護地区を設置するよう任命した。これを受けてCBDは、2009年よりこのエリアの生物学的多様性に関する大規模なデータと情報をDONREに提供し、実現可能性調査および投資計画など、自然保護地区設置の準備環境整備をサポートしてきたが、自然保護地区設置はいまだ合法的には実現していない。一度、設置されれば、HVLが保護地区とラングールの管理をサポートする準備体制はできている。これは、「採石作業が、環境に影響を及ぼすことは不可避である」との認識があるからだ。しかし、保護地区の設置の任務を実際に担っているのは省であり、HVLやCBDではない。

 さらに注目に値するのは、HVLがシルバーラングールの保護支援のほかにも、国際ツル財団 (International Crane Foundation; ICF)に協力し、Phu My grasslandsにおけるオオヅル(Sarus crane, Grus antigone)の保護活動に加わっていることである。オオヅルはIUCNの絶滅危惧Ⅱ類(Vulnerable)に指定されている。環境破壊が進行することを懸念して、やはり自然保護地区の設置が提案されているが、何の決定もされていないのが現状だ。カルスト台地と同様、ここでも自然保護活動の全責任は省政府に属している。

 キエンルオンにしかない特有の生物学的多様性を保護するにあたり、重要なことは外資や国営のセメント会社、省政府、科学機関、NGO、そして地域全体の連帯責任であろう。この地域のラングールやツルなど世界的に絶滅の危機にさらされている生物の多様性については多くのことが知られている。しかし、これらの生物を効率的に保護するためには、まずは省政府が国営のセメント会社と協力し、ラングールの移動ルートを考慮して採石計画を見直し、調整する義務を負うこと、そしてカルスト台地と草地を保護するための自然保護地区の設置に対しても明確に公約を掲げることが必須となる。

http://www.iucn.org/news_homepage/news_by_date/2012/?9066/Exploiting-Limestone-Silver-Langurs-Lose-their-Home-a-Response

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