バクの認知度向上
翻訳協力:鳥取 薫子、校正協力:岩崎 友理子
2012年1月18日 IUCN News Story
保護対象種に関する知識が浸透していない場合、一般社会から自然保護プロジェクトへの支援を受けることは難しい。IUCN SSC(国際自然保護連合の種の保存委員会)のTapir Specialist Group(バク専門グループ)の委員長であるPatricia Medici氏は、刺激的で斬新なイベントにより、ブラジルにおけるLowland Tapir(アメリカバク) の認知度の向上に全力を注いでいる。
バク属4種のうちの1つであるアメリカバク(Tapirus terrestris)は、南アメリカ全域の11の国に生息する大型哺乳類である。しかしながら、森林破壊や農業発展により、生息地域が激減している。さらに、狩猟、ひき逃げ、家畜からの伝染病等の脅威の結果、アメリカバクの数は減少の一途をたどっている。Lowland Conservation Initiative (LTCI)、the Instituto de Pesquisas Ecologicas (IPE)プログラム、国際自然保護連合の種の保存委員会バク専門グループは、ブラジルにおけるアメリカバクの保護援助のため、長期的な研究や保護プログラムの実施に懸命に取り組んでいる。
ブラジルでは、多くの人々はバクが何であるかさえ知らない。事実、ブラジルではバクには頭が悪いイメージがあり、その名前は侮辱として使用されることもある。そのため、Patricia Medici氏とLTCIは、バクの認知度向上の為に、アメリカの6つの動物園でバクが描いた絵をオークションにかける「バクを助けるバク」(” Tapirs Helping Tapirs”)という奇抜で人々の注目を集める方法を思いついた。このユニークなイベントはブラジルメディアの注目を集め、資金集約だけでなく、ブラジルでのバクの認知度向上に大きく貢献した。このイベントの前後には、インターネットや雑誌を始め、ブラジルの国営放送の有名トークショー番組Jo SoaresでPatricia Medici氏のインタビューが放映さるなど、バクは80を超えるメディアで特集された。
「ブラジルでバクがこのような注目を集めることはかつて一度もありませんでした」と国際自然保護連合の種の保存委員会のバク専門グループの委員長であるPatricia Medici氏は述べる。「私たちはみなさんにバクについて日常的に学んでいただき、バクの生存について関心を持ってもらいたいと思っています。ブラジルにおけるバクの生存数は劇的に減少しており、保護支援が早急に求められているのです。」
バクの社会的組織やその他の脅威の影響に関する情報など、いまだ専門家でも分からないことが多数存在する。正確な推定生存数も未だ必要な情報である。バク保護の長期的な解決方法はさまざまあるが、動物が自由にいろいろな地区を移動できる野生動物保護地域や通路の確保が非常に重要である。世界中には120名の国際自然保護連合の種の保存委員会バク専門グループのメンバーが在籍しており、日々絶え間なくバクの生態について研究し、バク保護への最善策を模索し続けている。
http://www.iucn.org/news_homepage/news_by_date/2012/?9005/Raising-the-profile-of-Tapirs
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