英国のチョウ、約4分の3の種類が過去10年で生息数減少
2011年12月
翻訳協力:道本 美穂 校正協力:クロス広子
普通種が減少、そして多くの種が北部へと分布を拡大
英国のButterfly Conservation(チョウ類保全協会)とthe Centre for Ecology and Hydrology (CEH)(英国生態学・水文学研究所)よる調査の結果、ここ10年で生息数が大幅に減少したチョウ種は72%、生息域が急速に縮小したチョウ種は54%に上ることが明らかとなった。
Butterfly Conservationが発表したThe State of the UK's Butterflies 2011 Reportに掲載のこの調査結果によれば、2010年までに生物多様性の損失を食い止めるというEU(欧州連合)の目標は達成できなかったことが、ますます明白となった。しかし同時にこのレポートからは、絶滅が危惧されるチョウの中には、保全に向けた徹底的な努力によりその運命が好転し始めたものもあることが明らかとなった。
Large blue(ラージブルー、別名:アリオンゴマシジミ)とHeath Fritillary(コヒョウモンモドキ)
過去に絶滅したことがあるLarge blueは、生息数が増加すると共にその生息域も拡大した。また、Heath Fritillaryは絶滅寸前の状態から復活を果たした。
High Brown Fritillary(ウラギンヒョウモン)とDuke of Burgundy(セイヨウシジミタテハ)
一方、High Brown FritillaryとDuke of Burgundyの生息数は引き続き減少し、一層の保全活動が効果を上げない限り英国では絶滅する恐れがまさに現実となりつつある。
前述のレポートでは、チョウの普通種の総生息数が過去10年で約25%減少していること、そしてこれは英国の自然環境の根本的な問題を示唆していることが初めて示された。
チョウの生息数減少が野生生物全体に与える警告
チョウは指標種と考えられており、したがってチョウのこうした深刻な減少は、昆虫の多様性の重大な危機を意味している恐れがある。生息環境の悪化が、こうした減少の背後にあるおもな原因と思われる。前述のレポートでは、チョウの生息域と生息数の両方の変化について、10年にわたる調査を行うことが可能であることが初めて示された。
最も著しい減少
Pearl-bordered Fritillary、High Brown Fritillary、Duke of Burgundyは、過去10年で非常に著しい減少を示した。High Brown Fritillaryの生息数は69%減少しその生息域は49%縮小した。皆に愛されている庭の人気者Small Tortoiseshell(コヒオドシ)も、かつてないほどの減少を示した。
保全活動が重要
しかし、このレポートでは朗報もいくつか発見されている。1970年代に絶滅が宣言されその後80年代に再導入されたLarge Blueは、狙いを定めた保全活動が効果を上げ、新たに約20カ所のコロニー(生息地)を形成するまで拡大を遂げた。
Marsh Fritillary(チョウセンヒョウモンモドキ)とSmall Blue(スモールブルー)
英国のButterfly Conservationとその協力団体によって継続中の保全活動の結果、希少種であるMarsh FritillaryとSmall Blueの生息数も増加した。
生息域が北部に拡大
過去10年で、Peacock(クジャクチョウ)、Comma(シータテハ)、Speckled Wood and Ringlet(キマダラジャノメ)などのチョウ種は、気候変動の影響を受けその生息域を急速に北部に拡大し続けている。
Butterfly Conservation代表のMartin Warren博士は次のように述べている。「絶滅が危惧され減少の一途をたどるチョウの生息数は、狙いを定めた保全努力で増加させることができるという確かな根拠がやっと得られました。ですから、苦労の末に生息数を増加できたというのに、政府が財政支援を削減することで危うくなるなんて非常に残念です。生物多様性の損失を食い止め、私たち皆にとって健全な生息環境を実現するため、野生生物の回復に必要な財政支援は削減どころか拡大しなければならないのです」。
またButterfly Conservation調査マネージャーのRichard Fox氏は次のように述べている。「チョウは、私たちの環境にとって「予兆」です。最新のこの調査結果では、21世紀の英国でチョウが悲惨な状態にあることが明らかとなりました。政治家が壮大な公約を掲げても、チョウは希少種も普通種も田舎や町で減少し続けています。野生生物に悪影響を与える農業、森林管理、建設工事が原因です」
「けれども、多くのチョウが絶滅の危機に瀕する中、そうした減少の動きを長期的に反転させるために何をすべきかはわかっています。過去10年にわたって、こうした取り組みは実施可能であることが英国の多くの地方で証明されました。今必要なのは、これら成功したアプローチをもっと大きなスケールで展開することです。生態系の保全に向けた政府の新しいアプローチの中で、絶滅の危機に瀕する種にしっかり焦点をあてることが非常に重要です。さもないと多くのチョウを始めとした野生生物の象徴となる種は、絶滅に向かって減少し続けることになるでしょう」
CEHのチョウ生態学者であるMarcBotham博士は、「この最新調査で印象的なのは、大勢のボランティアの記録員が長期的なチョウのモニタリング計画に大いに貢献していることです。彼ら記録員の貢献がなければ、英国のチョウが環境変化にどのような影響を受けているかについて正確で細かい調査を行うのは不可能でしょう」と述べている。
前述のレポートは、長期にわたり継続中である民間の2つの科学プロジェクトthe Butterflies for the New Millennium (BNM) recording schemeとUK Butterfly Monitoring Schemeによって収集されたデータをもとにしたものである。
http://www.wildlifeextra.com/go/news/uk-butterflies011.html#cr
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