コウモリの白い鼻症候群、北米で拡大――アラバマ州で確認
2012年3月 Wildlife Extra
翻訳協力:菊地清香 校正協力:小山園子
致死率の高いカビにより、約550万匹のbats(コウモリ)が落命
2012年3月:北米東部で何百万匹ものコウモリの命を奪った疾患・白い鼻症候群(WNS)が、Jackson County(ジャクソン郡)のRussell Cave complex(ラッセル洞窟群)に生息するコウモリに確認され、この疾患がアラバマ州に到達したことが明らかになった。
「白い鼻症候群は、Tennessee(テネシー州)のいくつかの郡で確認されていましたが、アラバマ州では今年になるまで見つかっていませんでした」と、Alabama Department of Conservation and Natural Resources(アラバマ州自然資源保全局)の生物学者であるKeith Hudson氏は話している。「この病気はおそらく、アラバマ州に生息しているコウモリたちにとって、もっとも深刻な疾病脅威のひとつでしょう。コウモリの多種に感染する可能性がありますし、甚大な被害をもたらす性質の病気だからです。人間に感染するかどうかは、わかっていません」
原因はカビ――550万匹以上のコウモリが死ぬ
白い鼻症候群は科学者にもまだ十分に解明されていないが、新種のカビであるGeomyces destructansにより引き起こされる疾患であることが、研究によって明らかになった。多くの場合、感染したコウモリの鼻口部上でGeomyces destructansが白い塊になることから、この病名がついた。白い鼻症候群は、2006年にNew York State(ニューヨーク州)で初めて発見され、北米東部で550万匹以上の洞穴棲コウモリの命を奪った。コウモリの死亡率は、複数年にわたって感染のあった洞窟では、ほぼ100パーセントに達している。アラバマ州での発見により、これまでに白い鼻症候群が確認された州は、アメリカ合衆国で計17、カナダで計4となった。アラバマ州での発生は、北米最南端での白い鼻症候群の発生事例となる。
伝染
白い鼻症候群はおもにコウモリからコウモリに伝染することがわかっているが、衣類や洞窟探検用具についたカビ胞子を、人が気づかぬまま洞窟に持ち込む可能性がある。人の手でカビ胞子を運んでしまう危険を減らすために、どんな洞窟や鉱山に入る場合でも事前に土地所有者に問い合わせをし、U.S. Fish and Wildlife Service(アメリカ合衆国野生動物庁)の示す汚染除去手順に従うことが、洞窟の観光客に求められている。
コウモリは、アメリカ合衆国の生態系の重要な一部である。また、合衆国の農場経営者にとっては、大量の害虫を駆除してくれる存在である。食虫コウモリのおかげで、合衆国の農産業界は、おそらく毎年少なくとも30億ドル(約2,484億9千万円、1ドル=82.83円、2012年4月1日現在)を節約していると考えられているが、これは平均的な農場経営者の土地1エーカー(約0.4ヘクタール)につき約74ドル(約6,129円)に相当する。アラバマ州には、連邦政府が絶滅危惧種に指定したGray bats(グレー・バット)とIndiana bats(インディアナ・コウモリ)を含む、15種のコウモリが生息している。
http://www.wildlifeextra.com/go/news/white-nose-bats.html
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