CITES事務局長、カメルーンで起きたゾウの大量虐殺に重大な懸念を表明
CITESプレスリリース 2012年2月28日、Geneva(ジュネーブ)
翻訳協力:蔦村的子 校正協力:神田美恵
CITES(The Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」通称「ワシントン条約」)事務局長、John E. Scanlon氏は、カメルーン北部のBouba Ndjida National Park(ブバ・ンジダ国立公園)のゾウ――約450頭の密猟に関する先ごろの報告に対し、重大な懸念を表明した。
当該地域の行政機関は、この犯人を摘発して裁判にかけさせ、密猟された象牙を発見、押収するための支援を行っているところである。違法取引の象牙の輸送ルートや最終目的国になり得る国々に対しても、象牙の動向を厳重に警戒し続け、捜索に協調体制をとることを強く要請した。
「この直近のゾウの密猟事件は、大変な規模のものでしたが、私たちがゾウの生息地の多くで摘発している密猟犯罪の新たな動向を反映しています。こうした生息地では、高性能な銃器で完全武装した密猟者集団がゾウの個体群を大量に殺していますが、彼らはしばしば刑罰を免れています。CITESのプログラムであるMonitoring Illegal Killing of Elephants (MIKE:ゾウの原産国の違法補殺監視システム)によると、2011年に密猟の発生率が上昇しています。ゾウの密猟が急増していることは、ワシントン条約締結国であるカメルーンのみならず、アフリカゾウの生息地である38か国ならびに私たちCITES事務局にとっても、重大な懸念事項なのです」とScanlon氏は述べた。
ここ1週間のうちにChad(チャド)とthe Sudan(スーダン)の密猟者集団が、乾季を利用してゾウを大量虐殺したとの報告がある。そこで密猟された象牙は、近隣の紛争地域に渡る軍資金や武器・弾薬になっていると考えられており、こうした密猟の取締りに関係各国の協調的な対応が求められているのである。
CITES事務局は、カメルーン、チャド、the Central African Republic(中央アフリカ共和国)、the Democratic Republic of the Congo(コンゴ民主共和国)、スーダン各国のthe Ministers for Forests and Wildlifeと交渉し、取締りへの取り組みや国境を越えた密猟に対抗する仕組みを活性化させることへの協力支援を申し入れている。
Scanlon氏は、重大なゾウの密猟犯罪事件に対する協力支援活動の中心的役割を担うポジションに、CITES事務局のEnforcement support(法執行支援)担当の主任であるBen Janse Van Rensburg氏を指名した。Rensburg氏は、関係各国やthe International Consortium on Combating Wildlife Crime(ICCWC:野生生物犯罪撲滅のための国際コンソーシアム)に調印した国際組織(CITES、Interpol(インターポール:国際刑事警察機構)、the World Customs Organization(世界税関機構)、the United Nations Office on Drugs and Crime(UNODC:国連薬物犯罪事務所)、the World Bank(世界銀行))と、密猟者を裁判にかけさせるための機密情報の共有、密猟された象牙の発見と押収、ゾウの大量虐殺の防止などのために協働している。野生生物科学調査やDNAプロファイリング、地域密着型の密猟の取締りといった革新的な手段も、関係各国の法執行の取り組みを支える予備的な摘発方法として検討されているところである。
昨年11月、国際薬物犯罪事務所事務局長Yuri Fedotov氏は、「国際平和と安全保障への新たなる課題」という国連安全保障理事会への報告文書の中で、野生生物犯罪問題を取り上げた。先ごろ、インターポールとthe United Nations Commission on Crime Prevention and Criminal Justice(国連犯罪防止刑事司法委員会)も、野生生物の違法取引における犯罪組織の関与ついて、断固たる決意を示す決議案を採択した。
ゾウの原産国の違法補殺監視システムプログラムによれば、今年7月に開催される第62回ワシントン条約常設委員会において、アフリカ全土におけるゾウの違法な虐殺の最新動向を報告する予定であり、2013年3月にBangkok(バンコク)で開催予定の第16回ワシントン条約締約国会議(COP16)では、密猟データの包括的な解析結果を公表することになっている。
密猟摘発件数の急増は、アフリカゾウの生息地の大部分に影響を及ぼしている。海外で押収された違法取引の象牙はアフリカ各地から持ち出されており、CITES当局は、DNAプロファイリングの分析が可能であった数件を除いて、押収された象牙の真の出どころを特定することができなかった。したがって、ゾウを管理保全するためには、国家や地域、国際レベルでの取り組みが必要となるのである。
先に述べた直近のゾウの大量虐殺事件を見ても、CITESの主導で策定されたAction Plan for the Control of Trade in African Elephant Ivory(アフリカゾウ象牙不正取引コントロールのための行動計画)を効果的に実施することの必要性は明らかである。2011年8月、第61回ワシントン条約常設委員会においてAfrican Elephant Fund(アフリカゾウ基金)が創設され、最初の数か月で25万米ドル(2097万5000円:2012年3月27日現在 1米ドル=83.90円)を集めた。今までにフランス、ドイツ、オランダ、イギリスからの寄付を受け付けたが、今後は、たとえば南アフリカといった、より多くの篤志家が現れることに期待が寄せられている。
http://www.cites.org/eng/news/pr/2012/20120228_elephant_cameroon.php
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