トナカイはクリスマスだけのものではない
翻訳協力:星野 友子、校正協力:岩崎 友理子
2011年12月20日 IUCN News story
赤鼻のトナカイ「ルドルフ」がサンタクロースを引いて夜空を駆け巡ることは誰もがご存知だろう。しかしトナカイは、おもちゃを積んだそりを引くだけの存在ではない。重要な食料源であり、数多くの生態学的機能を果たし、その上IUCN(国際自然保護連合)によると保護戦略の強化が必要な動物でもある。
北米ではカリブー(学名: Rangifer tarandus)と呼ばれるトナカイは、シカ科の動物では唯一雄雌ともに枝角がある種である。野生のトナカイの季節移動のスケールは壮大で、過ごしやすい気候と食料を求め、1年間の移動距離が3,000km以上に及ぶこともある。
トナカイの餌は季節により異なり、夏は草や葉、冬は地衣類やキノコ類を食べる。トナカイのひずめは、雪上や岩場の歩行に大変適した大きく、湾曲した形をしており、地面を掘ったり泳いだりするのにも適している。
IUCNのSSC(種の保存委員会)シカ専門家グループの共同議長William J. McShea博士は、「数千年にわたり、人々が野生のトナカイに依存して食料と衣類を得てきた結果、シカ科の動物の中でもっとも家畜化が広まりました」と述べ、
「とくにクリスマスの頃に、世界中で伝承の主役となることで、トナカイは文化的に独特の存在感と、現在も強く残る絆を確立してきました」と続けた。
北米ではトナカイ生息地の減少が著しく、カナダではトナカイはすでに沿海州マリタイム(Maritimes)から姿を消した。さらにブリティッシュコロンビア州(British Columbia)で40%、オンタリオ州(Ontario)で50%、そしてアルバータ州(Alberta)では60%の減少も報告されている。このように生息地が減少した原因は、商業的な林業による生息環境の変化と、人口増加に伴う個体数の減少および分散である。
欧州では、野生のトナカイはノルウェイ、フィンランド、ロシアの山地と森林に生息している。ロシア連邦では密猟が深刻な脅威となっており、とくに国内のトナカイの繁殖は、多くの地域で減少している。東ロシアおよびノルウェイではトナカイの捕獲が厳しく制限されているにも関わらず、ロシアの大部分では依然として密猟が行われている。また、フィンランドにおける生息地消失や、ノルウェイでのウィンタースポーツによる自然破壊が進行していることも、トナカイを脅かす要因であろう。
「研究勧告されていても、トナカイの保護戦略の実施は遅れています」とIUCN SSCのシカ専門家グループ共同議長Susana Gonzalez博士は述べている。「まだ保護体制をとっていない国もあり、取り組みが必要です」。
現在、カナダ政府は国内のトナカイを保護する必要性を認識している。欧州では、ヨーロッパの野生生物及び自然生息地に関するベルン条約(Bern Convention on the Conservation of European Wildlife and Natural Habitats)のもとでトナカイが保護されている。
IUCNの「絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト」では軽度懸念(LC)として挙げられているが、トナカイの個体数がこれ以上減少しないようにさらに監視し、保護する必要がある。
http://www.iucn.org/news_homepage/?8879/Reindeer-not-just-for-Christmas
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