絶滅の危機に瀕するスマトラトラの新たな希望
2011年11月 Wildlife Extra
インドネシアに残された最後のトラの亜種
- ファウナ・アンド・フローラインターナショナル(Fauna and Flora International)
翻訳協力:道口佳代子 校正協力:赤木理恵
2011年11月: 最近の調査により、インドネシアの最後のトラの亜種スマトラトラにかすかな望みがあることがわかった。
トラが生存している多くの地域で人口が減少しているという報告は、希望のないよくある実態を表している。現在13の国で野生のトラが生息していることが確認されているが、インドネシア諸島では、バリ島とジャバ島からすでに2つの別種の亜種が絶滅した。
密集した熱帯のジャングルでトラの居場所を正確に割り出すのは、トラの秘密主義の習性と優れたカムフラージュのため、骨が折れる作業だ。しかし過去3年、8つのNGOが一体になり、Indonesian Ministry of Forestry(インドネシア森林省)の協力を得て、初のスマトラ全域での調査を行った。
森林面積の70%以上がトラの生息地
このプロジェクトを指揮した、WCS(Wild Conservation Society)とSumatran Tiger Forum会長のHariyo Wibisonoは「この調査はスマトラトラにとって節目です。絶滅の危機にさらされた種にとって、かつてない最新で最も信頼できる情報が得られます」と語った。
包括的な調査によると、調査された森林区画の70%以上にトラが居住しているが、状況は区画により大きく違っている。
Aceh(アチェ)州に新たに作られた330万ヘクタールのLeuser-Ulu Masen(ルスル~ウルマセン)地帯について、ファウナ・アンド・フローラインターナショナルの共著者Matthew Linkie博士は「この調査が、これまで調査されていなかったアチェの森林を、アジアにおける野生のトラの世界的に最優先の場所として定着させるのです」と説明した。
適切な環境下でのトラの回復力
もうひとつのポジティブな結果は、160万ヘクタールに及ぶ2番目に広大な森林区画であるKerinci Seblat-Batang Hari(クリンチ・スブラット~バタンハリ)にトラが広く分布しているということだ。地域の大きさは、10年にわたるTiger Protection and Conservation Unitの森林パトロールとあいまって、トラが適した条件化においてどれほどまでに回復力があるかというのを示している。
しかしながら、他の地域では森林伐採の影響は明らかで、森林伐採が深刻化している所では多くのトラが姿を消した。Riau(リアウ)州でWWF(世界自然保護基金)を率いるSunarto博士は、スマトラトラが直面している危機的な状況を警告した。「過去25年間、リアウは65%の自然森林を失ったので、トラが大きな打撃を受けているのも不思議ではありません。しかし、トラは今も他の場所で放浪し繁殖しています。ですから、私たちはそれらの地域で保護の取り組みを広げ、トラの亜母集団間の森の回廊を復元しようとしているのです」
パンテラ(Panthera、大型ネコ科の保護団体)のJoseph Smith博士は未来に目を向け、こう説明した。「この調査の結果は、どのような保護の取り組みがトラにとってプラスになるのかを計る素晴らしい基準となるのです」
« おそらく過去最大密輸量の象牙発見、マレーシアで15トン押収 | トップページ | 環境保護団体、マグロ類保存に関する年次会合を酷評 »
「03 ネコ科」カテゴリの記事
- 大型ネコ科動物の解体処理場の摘発により、南アフリカのトラ牧場に対する監視が遅きに失したことが明らかに(2019.11.01)
- 現地取材:アマゾンのジャガー闇市場(2019.01.12)
- 人間と動物にとってフレキシブルな空間が我々には必要か?(2018.12.18)
- ライオンの骨の取引における南アフリカの役割:見過ごされている話(2018.11.15)
- タンザニアが水力発電のために原生自然の残る保護区を伐採(2018.08.25)
「35 レッドリスト 絶滅危惧種」カテゴリの記事
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
「19 アジア」カテゴリの記事
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 絶滅寸前のヨーロッパウナギが香港のスーパーマーケットに流通(2021.10.26)
- ガラパゴス諸島の貴重な海洋生物を中国の巨大漁船団からどのように守るか(2021.09.21)
- 増大する中国漁船団により世界の海洋資源が枯渇(2021.09.14)
この記事へのコメントは終了しました。
« おそらく過去最大密輸量の象牙発見、マレーシアで15トン押収 | トップページ | 環境保護団体、マグロ類保存に関する年次会合を酷評 »
コメント