環境保護団体、マグロ類保存に関する年次会合を酷評
2011年11月21日 M&C Jasper Mortimer
翻訳協力:大塚有美 校正協力:森田猛
[アンカラ] ― 大西洋および地中海におけるマグロ、メカジキ、サメの乱獲防止について、38か国および欧州連合(EU)からなる代表者によって一週間にわたって議論が行われた。
大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は会議が終了した土曜日、イスタンブールでの7日間の会合が大変有意義なものであったと宣言した。その一方、環境保護団体はこの会合の結果を中途半端で効果がないものと非難している。
今回の会議でICCATは加入国や地域に対して、各国の漁船によるクロマグロ(Bluefin tuna)およびメカジキ(Swordfish)の漁獲量の記録を電子化するよう要請した。
そして今回「漁獲データを提出しない場合、漁業を認めない」という原則が明記された。この原則により、各加盟国および地域が漁獲量に関する十分なデータを提出できない場合、翌年度のクロマグロとメカジキの捕獲が認められなくなる。
さらに今回の会議にて、ICCATは2011年のリビア革命の際に領海で不法にマグロ類を捕獲したトロール船の公表をすることとなった。
また、会議の参加国および地域の代表者らは、トロール船によるクロトガリザメ(Silky shark)の捕獲後の確保を禁止することで合意した。クロトガリザメは絶滅が危惧されているが、他の魚に混ざって網に捕獲されることが多い。
世界自然保護基金(WWF)とShark Advocates Internationalは、ICCATのこれらの取り組みを評価しつつも、さらに踏み込んだ対策をとるべきだったとしている。
スイスに本拠地を置くWWFは声明のなかで、今回の会合において地中海のメカジキを保護するための包括的な対策案が採択されると同時に、海で捕獲されたクロマグロが食卓に上がるまでの完全なトレーサビリティを実現するための対策がとられることを期待していたが、その半分程度しか合意に至らなかったとしている。
WWFの広報担当Gemma Parkes氏はDPA通信の取材に対し、大量の漁船、乱獲、長期にわたる漁業期間によりメカジキは危機に瀕していると訴えている。また、強固な回復・管理計画を持っていないICCATの保護プランが幾分中途半端であると言及している。
WWFはICCATに対して140センチ未満のメカジキの捕獲禁止と、6カ月の禁漁期間を設けることを強く要請していた。にもかかわらず、今回の会合では捕獲対象は90センチ未満、禁漁期間は3カ月にとどまった。Parkes氏は「成長するまえに捕獲される状態が続くならば、メカジキはやがて絶滅するでしょう」と懸念している。ICCATの事務局長Driss Meski氏は、WWFの意見に対するコメントは差し控えているが、北大西洋におけるメカジキの漁獲割当量は今回の会合にて決定しており、南太平洋についても来年度に決定するとのことだ。
またParkes氏は、かねてからWWFが指摘していた地中海沿岸での蓄養業者によるマグロの乱獲への対策をとらなかったことに対し、ICCAT参加国の代表を非難している。生きたまま捕獲された大量のマグロはトロール船により養殖場に持ち込まれ、いけすで蓄養され脂がのってくると市場へ出荷される。しかし、蓄養業者は捕獲したマグロの量やサイズについて、第三者的立場の検査を受け入れるよう義務付けられてはいない。「養殖場に持ち込まれるマグロの数とサイズを蓄養業者自身に報告させるのは大きな問題です」とParkes氏は指摘している。ICCATのMeski氏は、今回の会合において養殖場へ持ち込まれるマグロの監視について合意には至らなかったことを認めたが、養殖場に調査員を派遣することに関しては合意したとしている。また、マグロの捕獲データの電子化実施は大変意義のある改善であった、とDPA通信の取材に答えている。
一方、イギリスを本拠地とするSharks Advocates Internationalは、サメの保護に関してもっと対策がとられるべきであったとしている。今回の会合でニシネズミザメ(Porbeagle shark)の保護策およびサメのフカヒレ漁(サメから中華料理で使うヒレのみを切り取る漁法)の禁止措置の強化が否決されたことを非難している。
ただし、Meski氏は39の国および地域が参加するなかで今回の会合では最大限の合意が形成されたという見解を示している。ニシネズミザメに関してMeski氏は「私たちは勧告を提示しましたがが可決されませんでした。しかし、来年再びこの勧告が議題となるでしょう」と言明している。さらに、「今回、すべての参加国および地域が大変意義のある会合であったと評価しています」と付け加えた。
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