おそらく過去最大密輸量の象牙発見、マレーシアで15トン押収
2011年12月 Wildlife Extra
翻訳協力:蔦村的子 校正協力:赤木理恵
15トンの象牙、これは、象牙の差押えでは過去最大量のものと思われる。
マレーシアで押収された15トンの象牙が、年間の驚異的な犠牲数に合算された。
2011年12月。マレーシア当局は、Kuala Lumpur(クアラ・ルンプール)の真西にあるPort Klang(ポート・クラン)で、信じ難いほど膨大な量である15トンの象牙を没収した。マレーシアを含み、ここ数か月での六番目に主要な大量押収、おそらく過去最大量である没収である。
アジアでの最近の相次ぐ象牙押収の後で、我々は状況が改善するのではないかと希望を持ち得るかも知れなかった―しかしながら、直近のこの没収は、我々が記憶する限り最大量であり、あるいは過去最大であるかもしれない。この押収に比べれば他のすべての没収量などもののかずではないほどである。実際、東アジアでの年間押収量全体に匹敵すると思われる。我々の記憶し得るかぎりこの没収に先立つ過去最大の押収は、2002年のシンガポールでの約6.5トンというものである。もし一頭のアフリカゾウの牙2本を各30キロの重さであると見積もるならば、この運搬量はゾウ250頭の死を意味する。
この船荷は、ケニアのモンバサからのものであり「砂岩製手工芸品」と記されたコンテナの中に隠されていた。マレーシア当局は、この船荷をおよそ1,500万ポンド(18億6420万円、2012年12月29日 1ポンド=124.28円)相当と評価している。荷物はカンボジアのSihanoukVille(シアヌークビル)行きであった。このシアヌークビルは、Phnom Penh(プノンペン)から南西へ115マイル(約185.0695km)ほど行った所にある港町である。
象牙密輸量の莫大な増加
本件の象牙押収は、圧倒的な没収件数を記録してきた年であっても、現在までのところ最大である。2011年前半の象牙押収量は、過去3年間の年間押収量の合計を上回った。2009年8月から2011年6月にかけての間、ゾウ取引情報システム(ETIS: the Elephant Trade Information System)は、一日当たりおよそ4件の押収を記録した。
IFAW(International Fund for Animal Welfare、国際動物福祉基金)は、マレーシア当局の業績に敬意を表してはいるが、不正取引にかかわったすべての人物に逮捕・有罪判決そして圧倒的に厳しい刑罰が科されることなしには、象牙の不正取引は今後も行われ国際犯罪シンジケートを温存させ、生物の多様性に大きな打撃を与え続けるであろうと警告している。
犯罪シンジケート
IFAWの野生生物不正取引に関する番組編成責任者であるKelvin Alieは次のように語った。「象牙の不正取引は、国際犯罪シンジケートにとって低リスクで見返りの多い事業だということは変わらないのです。もちろん彼らは麻薬や武器の不正取引にも手を染めていますがね。象牙の一本一本はゾウの死体から取っています。象牙のために殺されるゾウは、ほぼ間違いなくカラシニコフ銃による数十の弾丸の機銃掃射を浴びているか、毒餌や残酷にも仕掛けられた落とし穴やバネ仕掛けの罠によって、長く苦痛に満ちた死を味わっています。」
インターポール(Interpol、国際刑事警察機構)
IFAWはインターポールと共同し、2012年にProject WISDOM(プロジェクト・ウィズダム)を立ち上げ、この恐ろしく深刻な象牙不正取引問題に取り組む予定である。インターポールのEnvironmental Crime Program(環境犯罪プログラム)は、アフリカにおける反象牙実施作戦の調整を行うことにしており、願わくば逮捕、有罪判決、そしてゾウにとっての最も残忍な脅威への深刻な打撃をこれで最後にする事が出来るよう望んでいる。
Alieは続けた。「私たちIFAWが資金を出しているインターポールとの共同作戦は、現在ゾウを救うために極めて重要なものですが、究極的に私たちは完全に国際的象牙取引を禁止しなければなりません。不正取引を撲滅するには、それしか方法がないのです。」
http://www.wildlifeextra.com/go/news/ivory-smuggling011.html
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