アルメニアの密猟
環境/2011年9月14日/10:23
翻訳協力:山本麻知子 校正協力:宮原小絵
途絶えることなく続く絶滅危惧種の密猟に、危機感をつのらせるアルメニアの環境保護論者
ArmeniaNow記者 Siranuysh Gevorgyan
アルメニア共和国の環境保護論者は、本来州が保護すべき動物の密猟が絶えることなく続いていることを案じている。
一方、この分野の州の担当者は、アルメニアの密猟は年々減少してきていると言明している。さらに、絶滅危惧種を一覧にしたレッドリストに記載されている動物の保護について、国として引き続き積極的に取り組んでいくと述べている。
環境省生物資源管理庁(Ministry of Nature Protection, Bio-Resource Management Agency)の保護部門(Department of Preserves)長官であるAram Aghasyan氏はArmeniaNowのインタビューに応じ、保護地区での密猟は「極めてまれ」だと述べている。これは、近年これらの保護地区で保護体制を強化する対策がとられてきたためだと説明する。この対策には、人員補充や、車両の提供、燃料の供給、現代的な監視設備の整備などが含まれる。
しかし保護論者らは、国立公園や指定地域の保護地区以外では、密猟は頻繁に起きていると主張している。特別に保護体制のとられていない地域では、猟が禁止されている動物がいともたやすく捕らえられているのだ。環境省は毎月、州環境調査局(State Environmental Inspection)の調査結果を公表しているが、それによると月に平均で5、6件の違法な猟が行われている。そのほとんどが、魚やカニに関係する密漁だ。今年上半期(1〜6月)の記録では、71件の違法な猟が行われていることが明らかになった(2010年同期の記録では79件)。
ごく最近、アルメニア南部にあるシュニク(Syunik)地方の町カパン(Kapan)近郊で、ベアゾールヤギ(アイベックスヤギ)2頭が殺された。警察は、密猟とレッドリストの動物を殺した疑いで3人を逮捕した。うち1人は、違法に所持していたライフル銃でヤギを殺したと自白している。警察の声明によると、州には約600万ドラム(アルメニア貨幣単位)(約1万6,000米ドル=約122万円:1ドル=76円、2011年10月5日現在)の損害が出ているという。
罰金は、ベアゾールヤギや国のレッドリスト(Red Data Book of Armenia)に追加されたアルメニア・ムフロン(大型巻角の野生ヤギ)の密猟では300万ドラム(約8,000米ドル=約60万円:1ドル=76円、2011年10月5日現在)、Caucasian gray bear(コーカサスグレイベア―)の密猟では100万ドラム(約2,700米ドル=約20万円:1ドル=76円、2011年10月5日現在)となっている。密猟が特別保護区域で行われた場合は、これらの罰金の額が5倍になる。
アルメニアの公式な猟のシーズンは、8月27日に始まり翌年2月27日に終わる。毎年環境保護省は、州が発行する免許を持ったハンターに狩猟が認められる動物の一覧を公開している。狩りを認められた動物はウズラ、ハト、ヤマウズラ、タシギ、ヒバリ、ムクドリ、ツグミ、ハイイロガラス、カササギ、水鳥、キツネ、イノシシ、野ウサギである。
環境セクター当局によると、猟の時期には密猟は減少するという。
密猟について語るとき、環境保護論者はまずセヴァン(Sevan)湖の状態を指摘する。有数の保護論者であるKarine Danielyan氏は、長年にわたる容赦ない漁や密猟によって湖はほとんど魚がいない状態になってしまったのだと言う。
「これは魚の問題だけではなく、魚がいなくなったことで湖の水質が低下し、湖は沼地化しています」と保護論者は話す。「森でも同じ問題が起きています。オオカミが人の居住区を襲うのはなぜでしょう。1つには、森林地帯が縮小していること、もう1つには、オオカミの食糧基盤が減少しているためです。その結果、飢えがオオカミたちを人の居住区まで追いやったのです。生態系の食物連鎖は人の手によって乱れつつあります。こうした現象は、我々に対する警告なのです」。
環境保護団体EcoLurの代表であるInga Zarafyan氏は、単なる密猟者よりも、その密猟で捕らえられた獲物から利益を得ようとする者がまず罰せられるべきだと強調する。保護論者によると、多くのレストランが猟を禁じられている動物の肉を使ったメニューを提供しているというのである。
原文 http://armenianow.com/social/environment/31730/armenia_poaching_environment
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