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2011年10月19日 (水)

米によるロシア・中国の違法木材排除

取引業者は告訴される
2011年9月7日 Jenny Johnson

翻訳協力:津金麻由美    校正協力:松崎由美子

 米国司法当局は、中国とロシアにおける違法な木材の排除に取り組んでおり、輸入法違反のリスクについて当地の意識を高めたい考えである。Jenny Johnsonが報告。

「中国を経由してロシアから米国に輸入される木材市場の大きさ、既存の米国法の執行が強化される可能性に関心が集まっています。」

 最後の数百頭となった野生のアムールトラが生息するシベリア東部の原野において、世界でも屈指の希少な原生林地帯が縮小している。その理由は明白である。この地域において、政府を後ろ盾にした、マフィアによる違法伐採が最近発覚したことにより違法取引の実態とそれに伴う損失が明らかになった。アムールトラの生息地であり冬季は他の動物に松の実を供給する貴重なチョウセンゴヨウなどのキーストーン種が失われつつある。

 当地域は、貴重な森林資源が急速に採取されている生態学的に繊細な地域の一例であり、米国司法省(DOJ)がロシアと中国において新たな啓発キャンペーンを開始するに至った理由の一つでもある。2カ国の林産業者を対象とした同キャンペーンは、違法木材および違法な木材製品の輸入を取り締る法律により刑事訴訟のリスクが高まるという警告を与える狙いがある。EUとオーストラリアも、森林破壊を食い止める国際的な取り組みを強化するべく違法輸入を禁止する法律を最近になって制定した。

 2013年発効予定のEUの新しい法規制の裏付けとして実施された影響評価によると、ロシア産木材の半数以上が違法木材である疑いがある。違法伐採による損失は、犯罪組織の編成に伴う人権乱用、年間数十億ドルの政府歳入の損失、大規模な環境破壊、グローバルに影響する生物多様性の喪失、と広範囲に及ぶ。世界の森林面積の22%を占めるロシアの森林は、気候の調節および炭素吸収源として重要な役割を担う。

 木材輸入および木材製品消費ともに世界一の米国は、制定後100年が経過したレーシー法(違法に採取された植物や植物製品の取引を禁止する法)の改正案が米連邦議会によって可決された2008年12月以来、違法木材の輸入に対して厳格な規定を適用してきた。その理由は明白である。擁護グループEnvironmental Investigation Agencyの推定では、統計データは多くはないものの、米国で年間消費される木材のうち10%が違法な木材であるという。レーシー法の条項の対象となる木材製品の品目は徐々に増えており、DOJによる法執行の状況も同様である。

 米国司法省は今春、ロシアから木材を搬入する唯一最大の鉄道の接続地点である中国辺境都市スイフェンホー(Suifenhe)で4つのワークショップを開催し、ロシア・中国の政府および業界関係者を招いた。DOJの環境・自然資源局(Environment and Natural Recourses Division)の法律顧問Tom Swegle氏は「中国の木材製品加工業者はレーシー法に関して持つべき知識が不足しています」と語り、この経験からレーシー法の要求事項に関する情報をさらに中国の産業界に提供する重要性が明らかになったと述べた。

 中国はロシア産木材の主要な輸入国であり、輸入された木材の大半は違法な木材である。これらの違法木材を最終製品に加工する中国の業者は、米国に輸出した製品がロシアで違法に伐採された木材を使用したものと判明した場合はレーシー法のもと責任を問われる可能性がある。

 DOJの環境犯罪部(Environmental Crimes Prosecution Office) 上級顧問のRocky Piaggione氏は、5月に極東ロシアで政府および業界関係者を対象にした同様のトレーニングイベントを開催した。これらは「2008年に改正されたレーシー法に関する注意を喚起するために世界各地で開催されている多数のワークショップの一つ」であり、「米国に違法な木材製品を故意に輸出した場合、製品は没収され、刑事告訴となることを産業界に警告する」という意図があると、Piaggione氏は語った。多くのワークショップが間もなく開催される。

 これまで木材に関する比較的新しい要求事項によって刑事訴訟に至った例はなく、没収および民事処罰にとどまっている。刑事訴訟を行うためには、米国政府が輸入者の故意を証明する必要がある。しかし、Piaggione氏は「レーシー法に基づき野生生物の不正取引を長期にわたって規制してきたが違反は毎日起きている。時間の経過に伴いレーシー法に関する情報がさらに浸透すれば、同法のもと刑事告訴となる事例を目にする日が来るといっても過言ではない」と、同法の執行が自然な変化を遂げる可能性を指摘した。

 米国の取り組みを受け、木材製品を消費する他の主要国も違法伐採を排除する取り組みを進めている。特に顕著なのはEUとオーストラリアで、EUは、違法材の輸入を厳重に取り締まる法案を2010年下期に可決し、施行する過程にある。同法では木材製品の輸入業者に製品材料の合法性を証明する義務を課す。

 一方、オーストラリアは、木材製品の輸入に関する法規制が一切ない消費国の一つである。代わりに産業界の自主規制に依存しているが、このシステムはうまく機能していないと政府は考えている。現在、同国立法府はIllegal Logging Prohibition Bill 2011に基づく法的要求事項の可決に向けて審議中である。可決した場合、違法木材の輸入を処罰する新しい方針となる。6月23日の法案草稿には「産業界の自主的な基準を除き、木材は合法性の証明を要求されることなくオーストラリアに輸入されている」と記述されている。オーストラリアに輸入される木材の約9%が違法伐採された木材であると考えられている。

 消費国による確認手続きを効率化するため、生産国においても管理・監視の体制を整備して違法伐採を排除する一層の努力が求められる。ロシアは現在、数年前に緩和された管理に関する条項を強化するため森林法を修正している。多くの専門家は、今日の不正取引におけるこの緩和策の責任は大きいと指摘している。5月に中国国境付近のハバロフスクで開催されたワークショップには世界銀行、WWFなどが参加した。参加団体は、EU出資プログラムの森林法の執行及びガバナンスの改善(Improving Forest Law Enforcement & Governance)が6月9日に出したワークショップに関する声明に基づき「現在のロシアの森林行政および管理体制は違法伐採を排除できないうえ、むしろ、違法伐採を誘発することも多い」との結論を出した。

 ロシアは法改正に加え、違法木材の流通を食い止めようとする中国政府に支援の手を差し伸べている。「ロシアは自国のみでは問題解決は不可能であると認識しています。中国の協力が必要なのです」と、Piaggione氏は語った。ワークショップにおいて、ロシアと中国は税関職員の会合に加え、中国に隣接するロシアの森林資源の利用および開発についてワーキンググループを常設した。7月14日、「違法伐採および違法木材の取引を排除するためロシアとの連携に細心の注意を払っています」と、中国外務大臣補佐官のCheng Guoping氏はロシアの公式通信社インタファクスに語った。

 モスクワの米国大使館よりリークした外交公電文書によると、ロシアにおける違法伐採の実態や違法取引を不可避に助長している米国の消費市場の大きな役割を当局は広く認識しており、強い関心を寄せている。「シベリアおよび極東ロシアで伐採された針葉樹の50%、広葉樹の90%は中国で最終製品に加工されて米国に輸入されるが、違法木材が占める割合の大きさを目の当たりにした今、米国にとって非常に憂慮すべき問題である」と、2009年の公電文書はWWFの数値を引用して綴られている。

 中国を経由してロシアから米国に輸入される木材市場の大きさ、既存の米国法の執行が強化される可能性に各国の関心が集まっている。「米国はロシア産木材の加工品を最も消費しますが、使用されている木材の一部は出所が疑わしく、本件に関してロシアと議論することに関心を持っています。おもに極東ロシアからの輸入ですが、最近になってロシア産木材の主要な輸入国となった中国は、もう一つの重要な関係国です」と、EU森林プログラムは声明の中で述べた。

 主要消費国の存在が違法木材および違法な木材製品が取引されるリスクを高めるが、消費国が協力し合うことで、ロシア・中国の政府および産業界による森林行政の改善を後押しする大きな動機が新たに生まれる。それによって得られるものは多い。とくに、広大な成熟林地帯を生息地とするアムールトラにとってメリットは大きい。


Jenny JohnsonはロシアSt Petersburgサンクト・ペテルブルグに拠点を置く報道記者である。
原文リンク: http://www.chinadialogue.net/article/show/single/en/4513

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