生物多様性新戦略計画2011-2020と愛知ターゲットへのCITESの貢献
翻訳協力:小松 勝 校正協力:柳川さやか
2011年9月9日金曜日
事務局長John E. Scanlonによる、 CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)
わたしたちは戦略計画や愛知ターゲットを成し遂げるために、力を結集する必要がある
Global Biodiversity Outlook 3(地球規模生物多様性概況第3版)によって、私たちは生物多様性の保護や持続的利用を可能にする前に解決すべき課題があることを、明確に思い出す。
現実は、独力でこの課題に取り組むことのできる会議や組織が一つもないのである。よって、私たちは力を結集する必要がある。
日本の愛知県名古屋市で開催されたCBD(生物多様性条約)を対象とするCOP10(2010年10月)で、最も実りある成果の一つは、生物多様性を守る為の包括的な戦略計画を採用し、愛知ターゲットとして知られている生物多様性の目標を設定すると締約国が決定したことであった。愛知ターゲットは組織全体に働きかけようとしている。
生物多様性に関連した代表者会議最初のハイレベルリトリート
2010年9月、生物多様性に関連した5つの代表者会議の事務局が、ジュネーヴの近くで開かれたリトリートに参加した。そのリトリートは、生物多様性やCOP10に関する国連総会のハイレベルのイベント前に、他の代表者会議の事務局が合同ミーティングを求めたため、その要求に応えてCBDの事務局長が主導となって行われた。
そのリトリートでは、多くの成果があった。しかし、5事務局すべてが同意した、2つの成果について焦点を絞ることとする。
CBD COP10で採用された、生物多様性に関する戦略計画2010-2020は、全ての生物多様性に関連する有効な枠組みとして役立てることができる。
そして、生物多様性に関連する既存の戦略や運営団体の独立について考慮している。改訂、更新されたNBSAPs(生物多様性国家戦略)は、生物多様性に関連した代表者会議全てを実行するために必要とされる活動の全範囲を扱うことができるであろう。
生物多様性に関連する代表者会議の4事務局は、協定した合同会議を通して、このCOP10への声明をCOP10本会議のハイレベル層に伝えた。そのような共同声明の配信はCBDの歴史上、初めてであった。そして、私たちはそのことを可能にした日本政府に対して非常に感謝している。
共同声明は以下の事項を含んでいる
それぞれの代表者会議には、とても明確な権限がある。CBDより対象範囲は絞られるかもしれないが、生物多様性の保護や持続利用を支えるという同じ目標の達成に向けて、貢献している。
私たちには、特有の歴史や権限、そして場合によっては、異なった団体があるが、生物多様性の保護や持続利用を支えるという共通の目標、そしてNBSAPsの最大限利用等によって、国レベルでの代表者会議がより効果的に実行されることを確かめたいという共通の願望によって結ばれている。
国は、生物多様性に関連した各々の代表者会議の交渉、認可、会議の実現のために、既にかなりの時間と努力、そして財源を使った。私たちは、過去40年にわたって代表者会議を実行するために徐々に作り上げてきた、科学、立法、行政、そしてその他の潜在的可能性に基づいて事を進めながら、この膨大な経験を認識し、そこから学ぶ必要がある。
NBSAPsを通して、それぞれの国の現実を反映できるようにする、堅固で適切な目標をもった包括的な戦略計画の導入が、より一致団結した効果的な現場の活動に貢献すると信じている。
名古屋で行われたCOP10の成果
本文は、以下の決定事項を含んだ名古屋COP10の重要な成果についてである。
関係者や他の政府に、NBSAPsの更新や全国レベルでの生物多様性の主な流れを支持するように強く主張する。そしてそれぞれの権限に矛盾しないやり方で、生物多様性に関連した代表者会議間の相乗効果を考慮に入れている。
CBDと他の関連した代表者会議の焦点間で、国レベルでの緊密な協調を検討するように関係者に主張する。NBSAPsの改正において生物多様性関連の代表者会議の全活動範囲を関係者が反映するためどのように援助すべきか検討するように事務総長に要請している。
必要に応じて、NBSAPSや関連した権限のある活動の更新や実施の過程において、生物多様性に関連した全ての協定についての国の重要な提案を取り入れるように、関係者や政府に求めていく。
ハイレベルリトリートの成果、CBD COP10で述べられた共同声明、そしてCOP10の成果が、生物多様性に関連した代表者会議事務局間の協力という新しい時代を反映している。つまり、各々の統治団体の自治権に十分配慮しし、代表者会議の効果的現場活動の実施について、より確立した視野をもっている。
戦略的計画と愛知ターゲットへのCITESの提言
CITESは、リストに記載された種(3万4千種以上)の国際取引が、合法的、持続可能、追跡可能であるように努めている。CITESの貿易関連の対策は、確かな科学や強い強制力を持って、1975年以来世界中の港や空港での多くの野生動物関連の取引を規制している。取引の多くが野生動物の管理を強化することによって、野生動物にかなり依存している。
地方での貧困の減少に貢献している。CITESは、生物多様性の持続的利用に関する重要なデータの主要供給者である。
CITESを効果的に実施することは、愛知ターゲットを達成する際、必須となるであろう。とくに目標1、2,3,4,6,7,9,12、17、18、19、20を達成するのに、貢献するであろう。
CITESの事務局は、2010年9月のリトリートやCOP10での誓約を遂行している。つまり、改訂、更新
されたNBSAPsに記載されている国や地域の活動を、CITESに含めることを願っている関係者への指針の進展、、ある地域のNBSAPSミーティングへの積極的な参加、ジュネーブでの国連生物多様性10年の祝賀会のサポート、the MEA InformationやKnowledge Management Initiativeの議長を共同で務めること。
2011年8月の第61回ミーティングで、CITES常任委員会は、CITES戦略的ビジョン2008-2013(CITES COP decision 15.10と調和して)で愛知ターゲットを具体化する方法、ビジョン延期期間を2016まで、2019まで、または2020までのどこまでとするかを決定するプロセスを開始した。この結果は、2012年7月に開催されるCITES常任委員会の第62回ミーティングで公表される予定である。
前進
COP10の決定は、特にNBSAPsに関して、CITES常任委員会が採用したような活動や、GEF(地球環境ファシリティー)や日本等による資金援助とともにそれぞれの国特有な生物多様性の現場への参加をより団結させ、効果的に実施するチャンスを作った。
わたしたちは今、NBSPsの改正や実施において異なった代表者会議の焦点をまとめる助けを各国にしていく必要がある。そして、これらの計画に、UNDAF(国連開発援助枠組み)のような他のプロセスと結びつける必要がある。
生物多様性に関連した全代表者会議をより効果的で団結したものにするため、国家的地域的取り組みを強化すべく、私たちの注意やエネルギーを集中する時だ。
そして、非常に結集した努力によって、愛知ターゲットを実現する戦略的計画を果たす最高の機会を得るのである。
[1]議事録は、以下のサイトで入手可能。
http://www.cites.org/eng/news/SG/2010/sum_retreat100901.pdf
[2]声明全文は、CITESのウェブサイトで入手可能。その声明に関連した他の代表者会議のWEBサイト(ラムサール条約、世界遺産、移動性野生動物)についても同様に以下参照。
http://www.cites.org/eng/news/SG/2010/20101028_sg_statement_nagoya.shtml
[3]NBSAPsについてのCITES関係者のための案内書の原稿は、以下のサイトで入手可能。
http://www.cites.org/eng/notif/2011/E026A.pdf
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