大型鳥が絶滅の危機に
2011年6月7日 International news release
翻訳協力:丸目多真季 校正協力:柳川さやか
IUCN(国際自然保護連合)と協力関係にあるバードライフ・インターナショナルが先ごろ公表した2011年度の鳥類版レッド・リスト(Red List of Threatened Species)をみると、世界最大の大きさを誇る鳥の1種が絶滅の危機にさらされていることがわかる。
最新版のリストでは、インドオオノガン(Great Indian Bustard:学名Ardeotis nigriceps)が絶滅の脅威が最も高い絶滅危惧IA類に格上げされている。乱獲、自然環境の改変、生息地の消失や分断が重なり、この素晴らしい鳥の個体数は、わずか250羽ほどにまで減ってしまった。
体高1メートル、体重が15キロ近くあるインドオオノガンは、かつてインドとパキスタンの草原のいたるところで見られたが、生息地が分断されて小さく孤立したものとなった今では、限られた場所でしか見ることができない。
「生息地がかつてない過密状態に陥ったことで、インドオオノガンのように広い場所を必要とする種が姿を消しつつあります。しかし長い目で見れば、自然の恵みが消えていくにつれて、損害を被るのは私たち人間なのです」とバードライフの科学・政策ディレクターのLeon Bennun博士は語った。
今年更新された情報によると、絶滅の危機にさらされた鳥は合計1,253種にのぼる。これは憂慮すべき数であり、世界の全鳥類の13%に相当する。
「1年の間に13種の鳥が、新たに絶滅の危機に陥った鳥としてリストに追加されました」とIUCNの 世界生物種プログラム副部長である Jean-Christophe Vié氏は語る。「これは気になる傾向です。しかし、保護活動が行われていなければ、この数はもっと多かったでしょう。バードライフの協力で集まった情報は、私たちが保護活動を改善し続けるうえで欠かせないものです。保護活動の強化は今、かつてないほど重要になっています。生物多様性の危機は、すでに私たちの暮らしによくない影響を及ぼしていますが、これを阻止するには、私たちがより一層力を入れて保護に取り組む必要があるのです。」
「鳥は、自然のバロメーターです。鳥には生態系の健全性がとてもよく反映されます。鳥類の生息状況が悪化しているとすれば、野生生物全般の生息状況も悪化しているといえます。私たちが今年更新した情報に加えた変更は、鳥類版レッド・リスト一覧に反映されます。これは特に世界各国の政府、グローバル企業、国連で、地球の状態を示す指標として使われます。」とバードライフのグローバル調査・指標コーディネーターのStuart Butchart博士は語る。
もう1種、バハマムクドリモドキ(和名が未定につき仮称を使用、Bahama Oriole:学名Icterus northropi)もまた絶滅の危機にさらされた鳥として、新たにレッド・リストの絶滅危惧IA類に分類された。
最近の調査によると、カリブ海域に生息するこの黒と黄の美しい鳥の固体数はわずか180羽ほどであるという。バハマムクドリモドキは、成熟した森林に生息し、ココヤシの木に営巣する。しかし、枯死性黄化病の発生により、営巣木が枯れてしまうと、かつては数多く生息していた森でその姿が見られなくなった。ところがバハマムクドリモドキは営巣地を失っただけではなく、新参のテリバネコウウチョウ(Shiny Cowbird:学名Molothrus bonariensis)にも生息を脅かされているのである。テリバネコウウチョウは托卵鳥で、他種の鳥の巣に卵を産む習性を持っている。
「多くの鳥は厳しい状況にあるようですが、今年の更新情報には、保護活動によって生息状況の好転した鳥が数種いることが、はっきりと示されています」とバードライフの世界生物種プログラム・オフィサーであるAndy Symes氏は語った。
Campbell Island Teal(カモ科で和名は未定 :学名Anas nesiotis)は、大規模に行われたネズミの駆除と、生存する個体を飼育下で繁殖する計画により生息状況が好転。現在はニュージーランドのカンベル島に戻り順調に繁殖していることから、絶滅危惧度の再評価では絶滅危惧IB類に格下げされた。
大西洋の島に生息する3種のハトも保護活動によって救われている。生息が脅かされていたマデイラバト(Madeira Laurel Pigeon:学名Columba trocaz)、ゲッケイジュバト(White-tailed Laurel Pigeon:学名Columba junoniae)、カナリーバト(Dark-tailed Laurel Pigeon:学名Columba bollii) は、生息地の消失と乱獲への対策が講じられことや、生息適地の保全が強化されたことにより、3種とも絶滅危惧度が低い区分に分類された。
「鳥は世界中の人々の文化に深く関わっていて、鳥を見ることは自然の状態を見ることにつながります。絶滅の危機にさらされた鳥の保護については、成功例がたくさんあります。私たちは、これまで以上の努力で保護を成功させていかなければなりません。 そうしなければ、インドオオノガンのような素晴らしい生き物を失うだけでなく、私たちの命をつなぐ仕組み全体が崩れてしまう恐れがあるのです。」とBennun博士は語った。
<その他の地域別特記事項>
南北アメリカ大陸
エクアドルヤブシトド(Pale-headed Brush-finch:学名Atlapetes pallidiceps)が絶滅危惧IA類から絶滅危惧IB種に格下げされた。
セグロトゲハシハチドリ(Black-backed Thornbill :学名Ramphomicron dorsale) が軽度懸念種から絶滅危惧IB種に格上げされた。
太平洋
カワリヒメシロハラミズナギドリ(Collared Petrel:学名Pterodroma brevipes) が準絶滅危惧種から絶滅危惧IB種に格上げされた。
Samoan Flycatcher(ヒタキ科で和名は未定:学名Myiagra albiventris) が絶滅危惧Ⅱ類から準絶滅危惧種に格下げされた。
アジア
Sula Megapode(ツカクツクリ科で和名は未定:学名Megapodius bernsteinii) は準絶滅危惧種から絶滅危惧Ⅱ類に格上げされた。
White-throated Wren-babbler(チメドリ科で和名は未定:学名Rimator pasquieri)が軽度懸念種から絶滅危惧IB種に格上げされた。
アフリカ
ヘビクイワシ(Secretarybird:学名Sagittarius serpentarius) が軽度懸念種から絶滅危惧Ⅱ類に格上げされた。
ズキンハゲワシ(Hooded Vulture :学名Necrosyrtes monachus) が軽度懸念種から絶滅危惧IB種に格上げされた。
ヨーロッパ・中東
ヒメチョウゲンボウ(Lesser Kestrel :学名Falco naumanni) が絶滅危惧Ⅱ類から軽度懸念種に格下げされた。
Socotra Buzzard(ノスリの亜種:タカ科で和名は未定:学名Buteo socotraensis) が初めてレッド・リスト入りし、絶滅危惧Ⅱ類に分類された。
上記の種およびその他の種について詳しくは下記のウェブサイトを参照。
www.birdlife.org/datazone/species/search
★ニュース翻訳を続けるためにご協力ください!
→JWCSのFacebookでページのイイネ!をして情報をGET
→gooddoでクリックやFacebookいいね!をしてJWCSを支援
→クリックで守ろう!エネゴリくんの森でゴリラの保全に協力
→JWCSの活動にクレジットカードで寄付
※日本ブログ村の環境ブログに登録しています。クリックしてランキングにご協力ください。
にほんブログ村
« セミクジラ、絶滅の危機を乗り越え故郷ニュージーランドに戻る | トップページ | 「野生動物のいない森」に直面、専門家がブッシュミートの取引規制を推進 »
「35 レッドリスト 絶滅危惧種」カテゴリの記事
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
「13 鳥類」カテゴリの記事
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- 海鳥のグアノ、毎年4億7000万ドル相当の価値を生み出す(2021.09.28)
- クマに注目―パンデミックでインドネシアのマレーグマの違法取引が悪化する可能性(2021.08.24)
- 海鳥の保護が気候変動からサンゴ礁を守る助けとなる可能性(2021.01.19)
- 有機畜産農業が野鳥を増やす(2020.01.31)
この記事へのコメントは終了しました。
« セミクジラ、絶滅の危機を乗り越え故郷ニュージーランドに戻る | トップページ | 「野生動物のいない森」に直面、専門家がブッシュミートの取引規制を推進 »
コメント