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2011年5月 1日 (日)

高級ファッションは高地アンデスを救えるか?

2010年12月10日 IUCN News story

翻訳協力:相馬 恵  校正協力:菊地清香

高まる高級衣料の需要が、南米の絶滅危惧種の一種であるビクーニャの保護に貢献している。しかし、そうした需要は、ビクーニャの繊維を生産するアンデスの貧しいコミュニティーの生計も守ることができるだろうか?

ビクーニャは南米野生のラクダ科動物であり、アルゼンチン、ボリビア、チリ、ペルーにまたがる高地アンデス地域に適応しているが、その体毛を目当てに長年にわたり乱獲され、1960年代までには絶滅にひんした。ビクーニャの体毛は世界一良質な繊維のひとつを持っており、1キロ当たり20,802円から76,719円(1ドル=83.21円 4月15日現在)で取引されている。

ビクーニャの繊維は、ビクーニャとともに過酷な環境で暮らしている極めて収入の少ないコミュニティーによって生産されているが、ヨーロッパや日本の裕福な消費者たちがその繊維で作られた衣料品に大金を支払っている。

1960年代に生き残っていたのは1万頭よりも少なかったが、国際レベルから地域レベルまでが一体となって協力したことで、現在その個体数は40万頭以上に増加した。ビクーニャ保護条約と「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約、CITES))による厳密な保護規制のおかげで、個体数が増加したのだ。この成果は、厳格な保護から持続可能な利用へと国際政策を転換させ、生かしたまま毛刈りをするための対象集団から採取した繊維の商業取引が許可されるようになった。

こうした取り組みの目的は、ビクーニャの繊維を扱う開かれた国際市場・保護地域・資源管理を目的とした組織化された適切な協定・フェアトレードの仕組みを作ることと、地域能力を育成することである。

持続可能な利用によるビクーニャ保護の論理的根拠は、ビクーニャの繊維を商的利用することで保護コストを上回る十分な利益が生まれ、その地域の貧困を軽減させられるということである。

しかしながら、保護の取り組みが大きく成功してきた一方で、社会経済的な成果はこれまでのところ少ない。利益の大半は地元のコミュニティーよりむしろ、貿易業者や国際的な繊維会社に握られている。ビクーニャの繊維の市場価値は高く、その生産に関心を寄せる多くの団体を魅了してきたが、それはビクーニャの種の保存とアンデスのコミュニティーの独占権の双方を脅かすのである。

「ビクーニャの利用によって保護と貧困緩和の機会をもたらすために、保護プログラムで利害関係者間の不平等な利益分配について取り組み、ビクーニャの種の保存に向けてさらに力を注ぐべきです」国際自然保護連合(IUCN)の南米野生ラクダ科の専門家グループ(GECS)の委員長Gabriela Lichtenstein博士はこう語る。

Lichtenstein博士は次のように付け加える。「ビクーニャの野生種の保存やアンデスのコミュニティーが持つ独占権、それにビクーニャ保護条約の意図が脅かされるのであれば、生産量を極限まで増やそうとする新たなプロジェクトを阻止することは重要です。そして、ビクーニャの繊維の不法な取引を管理するために、国際的協調を広げることも大切です」

原文 http://www.iucn.org/what/tpas/biodiversity/resources/news/?6675/Can-high-fashion-help-the-high-Andes

NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/

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