モンゴルで絶滅の危機にあるユキヒョウの狩猟が禁止
2011年3月24日 Daily Dispatches from the Sporting World
翻訳協力:蔦村的子 校正協力:松澤友子
絶滅危惧種のユキヒョウの狩猟をしたいと思ったことはあるだろうか。もしあるなら残念。モンゴル政府は最近、外国人ハンターに「科学的調査目的」での、絶滅危惧種であるユキヒョウ4頭の狩猟許可を撤回したところだ。
この記事は、新華社通信のホームページxinhuanet.comに掲載された。
モンゴル政府は、今月初めに下した、外国人に科学調査目的で複数のヒョウの狩猟を許可するという決定を取り消したと、地元メディアが報じた。モンゴルの自然観光環境相のL.Gansukhは、今年4頭のユキヒョウを科学的調査目的で殺すことに対する許可を撤回した。
NGO団体の研究者や代表者に会って問題を話し合った後のことだ。研究者は、政府が3月2日に出した決定に反論。遺伝子調査や現代の技術をもってすれば、この絶滅の危機に瀕している種を殺さなくても、科学的調査は可能だという。4頭のヒョウの狩猟を許可する決定は、世界中の反対を呼び起こした。ユキヒョウを保護するための団体Snow Leopard Network(ユキヒョウ・ネットワーク)は、モンゴル政府に懇願書を送り決定の撤回を求めた。
モンゴル政府は、年単位で許可数の範囲内での狩猟を許可しているが、今年の許可割り当て数にユキヒョウを含めたことは、多くの議論を呼んだ。以下はmongolnews.ubに掲載された記事の抜粋。
先週、政府は外国人に対して、2011年に4頭までのユキヒョウの狩猟を科学的調査目的に限り許可する決定を下した。内閣の決定に関連して、ユキヒョウの保護団体Snow Leopard Network(ユキヒョウ・ネットワーク)は緊急に行動をとり、モンゴル政府にユキヒョウの狩猟を許可しないよう求める嘆願書を提出。Snow Leopard Network(ユキヒョウ・ネットワーク)は、モンゴル政府にこの絶滅の危機にある種を確実に保護するために支援するよう、求めた。モンゴル政府が4頭のユキヒョウの狩猟許可書を発行したことに対し、国際社会全体が懸念を持っていることを強調したのだ。
「ご存じのように、ユキヒョウは絶滅の危機にあり、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに絶滅危惧種として分類されています。CITES(ワシントン条約)では、ユキヒョウは付属書Ⅰに記載され、ユキヒョウあるいはその体の一部の国際取引を一切禁じています」と、嘆願書には書かれている。
SLT(ユキヒョウ・ネットワーク)は嘆願書の中で、多くの侵略的でない、最先端技術を用いた研究に言及。分子遺伝学や、GPS(Global Positioning System:全地球的把握システム)衛星で探知可能な首輪をつけてカメラで追跡するなど、ユキヒョウを殺す必要のない調査手段で、すぐに利用可能なものを提示した。
先週の閣議で、外国人ハンターは、120頭の野生のヤギ、5頭のアカシカ、150頭のMongolian antelopesモンゴルレイヨウ(アンテロープ)、40頭のハイイロオオカミ、40頭のノロジカ、20頭のイノシシ、そして400羽までの野鳥の狩猟許可を得た。さらに今年は、2頭のヒグマと4頭までのヒョウの狩猟も許可された。
2009年と2010年に行われた調査では、モンゴルには、17万9,000頭の野生のヒツジ、2万4,400頭のシロイワヤギ、1万頭以上のアカシカ、約1万2,000頭のオグロガゼル、560万頭のMongolian antelopeモンゴルレイヨウ(アンテロープ)、1,200頭を超えるヒョウと6,000羽を超えるワキスジハヤブサ(セーカーハヤブサ)が生息すると、推定されている。
原文 http://www.fieldandstream.com/blogs/field-notes/2011/03/mongolia-calls-hunt-endangered-snow-leopard
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
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