ジャングルの叫び ネパール
2011年4月4日 IUCN News story
翻訳協力:福岡睦子 校正協力:山下留奈
Naresh Subedi ネパール
仕事場は、ジャングル。同僚は、ゾウやサイにトラ。Naresh Subediには、伝えたいことがたくさんある。魅力や感動にあふれる話もあれば、身の毛のよだつような話もあるのだ。
Naresh Subeliは、ネパールの野生生物の保護に従事し、サイやトラのような動物を研究し、監視している。さらに保護するために地域社会と積極的に関わっている。
Nareshは現在、チトワン(Chitwan)国立公園でサイの個体数調査をおこなっている。チトワン国立公園に生息するイッカクサイは、世界で2番目に多い。Nareshは最近、サイ8頭の首に無線機を取り付け、サイの行動を監視するために定期的に見回りを実施している。そのため、公園内で一晩を過ごすことも多く、そこにはトラやゾウやガビアルも生息している。
この仕事のおもな目的は、ネパールで増殖中の外来種であるミカニア・ミクランサが、サイに与える影響を調べることである。ミカニア・ミクランサは、サイのエサである植物に覆いかぶさるように成長し、植物が生存するために必要な日光を遮断する。
「ミカニアは、世界で最も侵略的な外来種のひとつに位置づけられます。他の植物が、ミカニアに覆われて枯れてしまうため、土壌浸食が起こります。これを防ぐ方法はまだ一つも見つかっていません」
Nareshらのチームは、捕獲したゾウに乗り、24時間サイを追跡している。この方法により、ミカニアの破壊的な影響を、明らかに見て取ることができるのだ。巨大な樹木は雑草で完全に覆われ、枯れて横たわっている。
さらに同氏らは、ゾウの背中からの追跡することで、ミカニアが群生している土地で、サイがどのように生息しているのかを見ることができる。ミカニアの繁殖により、サイはエサとなる植物を探して公園内を移動せざるを得なくなり、さらに悪いことには、公園を去ることにもなり得る。
公園に野生ゾウがいなかった時は、ジャングルをゾウで移動することに問題はなかった。しかし今では、30~40頭の野生ゾウが生息しており、サイの追跡が極めて危険になっている。
「最近、捕獲したゾウに乗ってサイの追跡をしていると、突然、象使いに危険だと合図されました。あたりを見回すと、大きな野生の雄ゾウが近づいてきているのが見えました。チトワン公園の南部で、雄ゾウが地元住人5名を殺害したことを知っていたので、私たちはとても怖くなりました。幸いにも、その雄ゾウはとても穏やかで、住人を殺したゾウではないことに気づきました。雄ゾウはキャンプまでついてきて、捕獲したゾウとともに一晩過ごしました。私たちは決して雄ゾウの邪魔をせずに静かにしていたため、攻撃されなかったのかもしれません。私はこれから何年も、ジャングルの保護のために働かなければなりません。そのため、ゾウやトラに攻撃されるわけにはいかないのです!」とNareshは述べた。
サイとは別に、Nareshは他の動物の追跡にも関与している。昨年、Nareshはチトワン国立公園のトラの個体数調査に参加し、非常に励みになる頭数である125頭の繁殖中のトラを確認した。さらに、Nareshは反密猟活動も支援しており、人間と野生動物の対立問題に取り組み、公園地域において保護の教育活動を行っている。
Naresh Subeliは国際自然保護連合(IUCN)のメンバー組織であるNational Trust for Nature Conservation(NTNC)に勤務し、地域社会だけでなく、他国や、国際機関と協力することも多い。
原文 http://www.iucn.org/what/tpas/biodiversity/?7214/Rumbles-in-the-jungle
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
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