世界の最貧困層の多くが地元の森林管理により利益を得る
2011年3月21日 IUCN インターナショナルニュースリリース
翻訳協力:平田明香 校正協力:山下留奈
地域型森林管理へ投資することにより、世界の最貧困層の生活レベルを改善できることが、国際自然保護連合(IUCN)の最近の研究は示唆している。世界中で「世界森林デー」が祝われる中、国際自然保護連合は各国の政策決定者に対し、森林に依存する地域が森林から得ている様々な利益を強く訴えている。
同研究によると、森林に大きく依存している地域で、地元住民による資源の経営管理を支援するために投資される各国政府や支援組織の森林部門の予算は、年間120億米ドル(約1兆円)であるが、そのうちほんの一部しか使用されていないことが明らかになっている。対照的に、商業林には年間1,500億ドル(約12兆円)が費やされている。
「森林で暮らしながら、食物、燃料および薬の調達を森林に大きく依存する人が、その森林資源を経営管理して、利用することは当然のように聞こえますが、現実は違います。私たちが、アフリカ、アジア、およびラテンアメリカでおこなった研究で示したように、住民の森林に対する権限や管理体制を拡大強化することは、貧困の改善だけでなく、森林の生物多様性を促進することにつながります」と国際自然保護連合の環境開発部門ディレクターであるStewart Maginnisは述べている。
ウガンダのエルゴン山(Mount Elgon)で、国際自然保護連合がおこなった事業により、地域住民と国立公園当局の間にあった、長年の問題に対する解決策を示すことができた。この事業により、生活を改善し、荒廃した土地を修復することで、地域経済が生み出され、(森林資源を)維持できる範囲で、国立公園内の特定資源を持ち出すことを地域住民に許可する、という合意が公園当局と地域との間に締結された。その結果、不法伐採が80%減少した。
タンザニアのシンヤンガ(Shinyanga)州で、地域住民に森林資源の管理権が委託された結果、825村の住民225万人の生活水準が改善された。同地域は、現在50万ヘクタールの新たな森林地帯を管理しており、村人1人当たり月間14米ドル(約1,164円)の追加収入を得ている。同国の地方村民の平均は月8.5米ドル(約706円)である。
「この事業は、維持可能であり、投資情報も豊富なため、さらなる研究や分析を待ってから事業を開始するための決断を下す必要はありません。もし、この地域型森林管理に投資できなければ、これまで公的基金、努力、時間を費やしてきたゴールに対して、大きな打撃を与えることでしょう。そのゴールとは、貧困を改善し、すべての人にとって継続できる開拓を確保することです。」と国際自然保護連合の森林保全プログラム副代表であるStephen Kellherは述べている。
合計16億人が、森林に依存しながら生活している。このうち14億人が、発展途上国に住んでおり、10億人が極度の貧困状態にある(このうち大多数は、女性や先住民族、そして他の社会から疎外された集団である)。最近の研究で、およそ12億ヘクタールの伐採された森林や荒廃した土地は、地元の森林管理により修復できるだろう、というデータが国際自然保護連合とGlobal Partnership for Forest Landscape Restorationにより示されている。
日本円換算レート 1 USD=83.13JPY 2011年4月17日
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
« よりよい道を探る エクアドル | トップページ | モーツァルトにちなむカエルと腹話術をするカエル、ハイチ復興への希望と警告を訴える »
「31 生物多様性条約」カテゴリの記事
- 自然と共存する社会の実現(B20東京サミット協働提案より一部抜粋)(2019.09.03)
- 野生生物保護区の3分の1が道路や町の建設により破壊されている―研究論文(2018.08.30)
- 生物多様性の持続可能な利用:ブッシュミート及び持続可能な野生生物の管理(2018.05.19)
- ヨーロッパに生息する野生ミツバチ類の約10%が絶滅に直面しており、50%以上の状況が不明(2016.02.05)
- 気候変動に脆弱な生物の評価ガイドラインに関する最新の研究(2015.08.25)
この記事へのコメントは終了しました。
« よりよい道を探る エクアドル | トップページ | モーツァルトにちなむカエルと腹話術をするカエル、ハイチ復興への希望と警告を訴える »
コメント