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2011年4月30日 (土)

経済的インセンティブは生物多様性保全の解決へのカギ

生物多様性条約事務局 プレスリリース
モントリオール 2011年3月16日

翻訳協力:鈴木洋子  校正協力:荒木和子

環境活動を方向づける経済的インセンティブの役割に関する生物多様性条約をもとに新しいレポートが発表された。この中で、環境に損害を与える活動への補助金の廃止と環境に有益な活動を推進する奨励制度の促進をうまく調和させて実施すれば、経済面や環境面での利益を生み出すことができると結論付けられている。

生物学的多様性の保全と持続可能な利用のための奨励策 - 事例研究とその教訓と題したこのレポートは、2009年に開催された奨励策に関する一連の国際ワークショップで得られた成果であり、生態系と生物多様性の経済学(TEEB)に関する研究に基づいて行われた作業に立脚している。

このレポートは、有害なインセンティブの改善および積極的な奨励策の推進に関する重要な情報を提供し、過去から学んだ簡明な教訓を再認識し、また具体的ないくつかのケースを地理的に偏よることなく示している。

「人類が自然と調和して持続可能な未来の生活を実現しようとしているのなら、自分たちの経済行為を変えていく必要があります。このレポートでは、これまで私たちが行ってきたような有害なビジネスから脱皮できる方法を示しています。」と生物多様性条約事務局長Ahmed Djoghlaf氏は述べた。

とくに、天然資源に正規の価格よりも低い価格を付けたり、あるいは持続不可能な増産を促したりするような環境に有害な助成金など、負の効果をもたらすインセンティブを改善すれば複合的な利益が得られる。そうした改善により、環境に有害な活動の助長が阻止されて広範囲な経済の歪みが取り除かれる可能性がある。また有害な助成金を見直すことで財源不足の問題を解消することができるかもしれない。さらに、負の効果をもたらすインセンティブを撤廃あるいは減らすことにより、環境に有益な奨励策を導入する必要性を少なくすることも¥できる。

生態系サービスの支払いや持続可能な農作業を実施するための支払いなど、生物多様性を保全してその構成要素を持続可能な方法で使用するインセンティブを提供する措置、および地域社会が管理する天然資源管理システムなど、その他の間接的な措置は、生物多様性の考慮事項が関連する経済分野すべてに確実に反映され、政府や社会全体で確実に「主流となる」ための重要なツールとしてますます認められている。  

さまざまなインセンティブを提供する方策が重要な手段であるということがにわかに認識されつつある。それらのインセンティブにより生物多様性を保持し、またその多様性を構成するさまざまな要素を持続可能な形で利用していくことが目的である。例えば、生態系保護事業への支援金、あるいは、持続可能な農業活動や地域社会が運営する天然資源管理システムなど、その他の間接的な方策を実践した場合の補助金などがあげられる。生物多様性を考慮することは関連するすべての経済分野に反映されるということが実感されており、これは政府や社会全体で確実に主流となってきている。

生物多様性戦略計画2011 – 2020では、奨励策にただちに取り組む必要性を示している。方法としては、2020年までに生物多様性に負の効果をもたらす助成金などのインセンティブの撤廃や段階的廃止、または改正を求め、さらに生物多様性の保全や持続可能な利用のための正の効果をもたらすインセンティブの開発と適用を求めてゆくことがあげられている。

事例研究1: ノルウェー
-1981年から1994年まで、ノルウェーは漁業への助成金の80%カットをおこない、1.5億米ドル(122億7千万円)から3000万米ドル(24億5千万円 4月22現在)にまで削減した。同時にさらに有効な管理対策が採用され、漁業分野の自立を助けた。

現在の構造的割り当てシステムは、経済的な考察を考慮に入れて収益力の高い漁船団を育成するように設計されている。出漁が厳密に管理されている場合は漁獲高がおもな経済的課題となる。地域的な検討もノルウェーの漁業政策の重要な一部である。

事例研究2: メキシコ
-深刻な森林破壊や水不足の問題に立ち向かうために、メキシコ政府は森林の水環境事業支援(PSAH)プログラムを開発した。この計画は、林業が商業的に実現不可能であった地域での流域の保護と帯水層の涵養の確保による森林保全を目的として、森林の所有者に対し支援を行うために開発された。この計画では、消費者が支払う既存の州の水道料金を値上げし、その中から環境事業のために支払う割合を指定して資金調達をしている。

環境事業から利益を得る人々と環境事業を提供する人々とを結びつけるこの仕組みは、当時はかなり革新的であった。

CBD技術シリーズ No.56として公表されたこの報告は、生物多様性条約のウェブサイト http://www.cbd.int/ts/で入手できる。

原文 http://www.cbd.int/doc/press/2011/pr-2011-03-16-ts56-en.doc

NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/

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