司法の不手際で野鳥卵密輸業者逃がす
2011年4月4日 Theage.com.au Mark Russell記者
翻訳協力:松村麻友子 校正協力:佐藤梨絵
ベンディゴ(Bendigo)付近に住んでいるある夫婦が国際的な鳥卵密輸組織を運営していることが、ある機密調査書類によって明らかになった。
長年かけて書類のコピーを入手、野生生物捜査官によって編集され、検察官へ提出された。
その文書には、Mark Christian氏という運び屋について記述されている。彼は、南アフリカからメルボルンへ戻る際、33個の外来種の鳥の卵を体にくくりつけて国内に持ち込んだ。その後、密輸組織の活動について暴露したのだ。
調査団は、Christian氏の詳しい供述の中に、多くの密輸メンバーに対しゆるぎない主張があるとにらんだ。さらに、官僚の不手際があったことで、7年もの間当局の調査が行われていないことに苛立ちを感じていた。また依然として、調査団は、シンジゲートがビクトリア州で、野放し状態で活動し続けていると、確信している。
捜査官によると、密輸の首謀者は、鳥への興味が利益の出る卵の密輸に転身してしまった、ベンディゴ付近にいる夫婦だ。夫は、ランナー(The Runner)の名で知られており、自身が卵を国外に持ち出すか、もしくは、運び屋を雇い、その仕事をさせるようだった。
ランナーが初めて密輸の旅に出たのは、2000年10月7日、妻と一緒にシンガポールへ行ったことだった。彼は、外来種の卵1ダースをベストに忍ばせて国外に持ち出し、外来種のものと交換して2日後にオーストラリアに戻った。
ランナーと他の運び屋は、2002年10月25日、Andrew Hylands氏がメルボルン空港で10個の高価な卵を持っているところを捕まえられるまで、頻繁にシンガポールやフィリピンへの旅を繰り返していた。
Hylands氏の逮捕後、組織のメンバーは、容疑から逃れるために海外へ行くことを控え、6か月後、また活動を再開した。
Christian氏がメンバーに加わったのは2003年8月であり、鳥の飼育について相談するためにランナーを訪ねた時だった。ランナーの妻は、彼に運び屋として仕事を依頼する前に、数羽の鳥とケージを彼に売っている。
2003年10月6日午前2時、ランナーの妻は、孵卵器から42個の在来種の卵を取り出し、Christian氏に合わせて仕立てた特別なベストに、それらの卵を入れた。
Christian氏はそのベストを着たまま、メルボルン空港まで車を走らせ、南アフリカ行きの便に搭乗した。彼は、ヨハネスブルクからポートエリザベスまで移動し、農場まで車に乗せられ、そこで卵を手渡しした。そして10月12日、33個の外来種のオウムの卵とともにメルボルンに戻った。
ランナーの妻は、Christian氏の自宅へ出向き、ベストに入れたままそれらの卵を回集し、そのまま湯たんぽを備えた箱に入れ、車で立ち去った。
2週間後、Christian氏は、自分のやったことが間違った仕事であったと判断し、調査団に連絡した。彼は、シンガポールを拠点とする犯罪組織によって設立されたシンジケートで働いていたことを認め、密輸する多くの卵を孵化する繁殖期、この繁忙期にどのようにして2人の運び屋が頻繁に同じ航空機に乗ったかを明らかにした。彼らは、それぞれ$300,000(24,939,000円:2011年4月16日現在の為替レート)相当の卵を運んでいた。
密輸された在来種の卵は、Christian氏によると、コンゴウインコ(macaws)やオオバタン(Moluccan cockatoo)やタイハクオウム(umbrella cockatoo)やボウシインコ(Amazon parrot)や中型インコのコニュア類(conure)のような、希少な外来種の鳥の卵と交換されていた。そして、孵化したヒナは、闇市場に出すまで、独自に飼育されていたようだ。
Christian氏からの情報に沿って、調査団はウォンガラッタ(Wangaratta)にいた一人のシンジケートのメンバーとランナーの妻を逮捕した。二人は、Christian氏の主張を裏付ける、責任ある供述を行った。
調査団は、組織の活動を終わらせることができると信じ、オーストラリア連邦警察に支援を要請した。
オーストラリア連邦警察(AFP)の環境犯罪捜査官らが、秘密工作を開始、マネーロンダリングする人物を装った捜査官を使い、シンジケートの内部に潜入しようと試みた。しかし、彼らに疑われ、拒絶される結果に終わった。
最終的に、ビクトリア州の犯罪条例に基づいて野生動物管理に関する共謀の罪で、8人を起訴した。しかし、組織の活動範囲を考えると、州法ではなく連邦法で起訴されるべきであると認識され、この起訴は失敗に終わった。
ビクトリア州のDepartment of Sustainability and Environment の調査団は、2008年、8人の被告人に関して連邦告訴するよう求めるための証拠書類を連邦検察官へ提出した。
しかし、連邦当局は、昨年の終わり、起訴相当にするには証拠不十分であり、新たな告訴を行えるものではないとした。この捜査、コード名“Operation Janitor”は終了し、組織へのの監視も停止した。
Christian氏に関しては、Ringwood Magistrates裁判所で、絶滅危惧種の標本体を輸出した件と、それらを輸入した件の2件の罪に対し有罪であることを認め、12か月の保釈金(good behavior bond)および6か月の執行猶予付き判決を受けた。
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
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