東ヒマラヤ地区で危機に瀕する淡水生物
2011年1月13日 IUCN International news release
翻訳協力:平野容子 校正協力:佐藤梨絵
東ヒマラヤ地区で水資源開発が急速に進んでいるが、開発計画策定や地区の生物保護を進める上で関連した情報が大幅に不足している。そのため、地区内の淡水生物の生態系やこれらの水資源を糧としている地域の生活や経済活動も危機的な状況におかれている。
IUCN(国際自然保護連合)とZoo Outreach Organisation(ZOO)が行った絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストTMの最近の調査では、現在、東ヒマラヤに生息する魚、軟体動物、トンボ類、イトトンボ類など1073種の生物のうち31.3%が「データ不足」に評価されており、あらためて調査をする必要があることが強調された。
IUCN生物プログラムの担当者David Allen氏は、「急速な開発が進められている中で、政治家、立法者、その他利害関係者は淡水生物や生息地の現状についての情報を入手し、その内容を計画策定及び決定事項に組み込むことが不可欠です。地域内の生物や生息地保護に関する法律は存在していますが、その法律が必ずしも履行されていません」と述べている。
情報が十分に入手できる生物のうち7.2%は「絶滅危惧種」に、さらに5.4%が「準絶滅危惧種」に分類された。ガンガ(Ganga)川やブラフマプトラ(Brahmaputra)川の下流は、公害、沈殿堆積や川の流れに変化をもたらす森林の伐採と劣化、そしてダムの建設により大きな影響を受けている。ガンガ川や他の河川流域に生息しているプティトマハシア(Putitor Mahseer)種の魚類のトールプティトラ(Tor Putitora)は著しい影響を受け、その生息数は減少している。そして、今後100年以内にその数が更に最大80%減少すると予測されている。
地域内では、水資源や運送インフラに関する開発が計画されており、これらの計画は生態系や生息地に影響を及ぼすと考えられている。例をあげると、ミャンマーのエーヤワディ(Eyeyarwaddy)川やインド北部の近隣の川に生息しているハイフィングラスフィッシュ(Highfin Glassy Perchelt)種のパランバシスララ(Parambassis lala)とよばれる魚は、生息地を奪われたり、乱獲されたりしたために、準絶滅危惧種に分類されている。しかし、保全計画や今後の開発計画の策定を導く情報が十分に取得できないために、ハイフィングラスフィッシュを含む他の魚が絶滅危惧種に分類されようとしている。
Zoo Outreach Organisation(ZOO)の執行役員であるSanjay Molur博士は、「地域の人々、計画を決定する担当者は、淡水魚やその生息地をあまり重要視しておらず、目先の計画のために魚を乱獲しています。地域の淡水魚やその生息地と長期的に利害を有する地域社会は、開発計画や生物保護計画に十分関与し、これからも自然環境によりもたらされる生活やその恩恵を守らなければならないのです」と述べている。
今回の調査では、生物保全計画に必要な情報をさらに収集するため、地元の専門家に対する分類や調査方法の更なる訓練と、生物の種の状態を評価するための財源の増加が急務であることが浮き彫りになった。
東ヒマラヤには、保全活動が必要であると認められた地域がある。具体的には、ネパール東部、 インドのシッキム(Sikkim)地方、アッサム(Assam)地方とマニプル(Manipur)地方、そしてミャンマーである。野生生物生息地をする手段として、未処理の下水、産業汚水、農薬の排出の管理や減少等の水質改善、現存のダムや用水路の環境への影響の再検討、森林伐採の縮小と森林復元計画の増加、目の小さな魚網、ダイナマイト、毒や電気を使った破壊的な漁や乱獲対する法律の履行、軟体動物の大規模な採集に対する監視と規制が挙げられる。
Tanguar hoar湿地で進行している地元中心の自然と共生したプロジェクトは、保全活動の良い成功例だ。湿地帯の資源は開発によって脅かされていたが、IUCNのバングラディッシュ事務局は2002年より革新的な共生管理システムに取り組み、その結果、天然資源を持続的に活用できるようになった。この取り組みでは、湿地帯を効果的に管理する自治体の潜在的な可能性を拡げ、さらに天然資源への依存を減少させる仕事を創出した。
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
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