アフリカのサイの密猟、ここ数10年で最悪の危機に
2011年3月25日 IUCN News story
翻訳協力:丸目多真季 校正協力:山口絵美
用意周到で手口が巧妙な犯罪組織が、この3年間に800頭を超えるアフリカのサイを殺している。ただ角を得るだけのために。南アフリカやジンバブエ、ケニアで密猟が急増し極めて深刻な事態に陥っているのを受け、アフリカのサイ専門家の主要メンバーが最近、南アフリカに集まった。アフリカ大陸全土におけるサイの生息状況を把握し、密猟による危機的な状況を打開する策を見つけるためである。
「生物学的に適切な管理を行い密猟対策に力を入れた結果、アフリカに生息するサイ2種の個体数はやや増えましたが、まだ組織的な犯行が増えている密猟については気がかりです。ここ数年で急増した密猟を撲滅できなければ、大陸のサイの個体数はまた減り始める恐れがあるのです」とIUCN(国際自然保護連合)種の保存委員会(Species Survival Commission:SSC)のアフリカ・サイ専門家グループ(African Rhino Specialist Group:AfRSG)の科学顧問Richard Emslie博士は語る。
南アフリカだけでも昨年は333頭、そして今年はこれまでに70頭以上のサイが殺されている。アフリカを離れるサイの角の大半は東南アジアの医薬品市場に向かうが、その市場の存在が密猟の横行を促しているとみられる。とくに南アフリカでのサイの密猟には、ベトナム人が繰り返し関わっている。
クロサイ(Diceros bicornis)は現在4,840頭になり(2007年の4,240頭より増加)、シロサイ(Ceratotherium simum)はさらに多く20,150頭になった(2007年の17,500頭より増加)。サイの個体数は増加しつつある。しかし、密猟が増加しているなかで、資金力のある組織犯と戦うための資金が不足していることが依然として懸念される。
サイの専門家たちは野生生物調査員や警察、検察当局に一層の協力を要請。治安判事と裁判官にはサイの密猟問題にこれまで以上に敏感になることを求める一方で、サイの密猟者と角の密売人を発見し犯行を阻止するための新たな手段と技術を開発する際の支援を求めた。逮捕者が増加するなか、有罪率の改善とサイに絡む犯罪に対する罰則の強化が早急に必要な国もある。
アフリカ・サイ専門家グループ(AfRSG)は最近の密猟防止対策を評価した。このなかにはNational Wildlife Crime Reaction Unit in South Africaの設立、サイの生息地全域における保護活動の強化、DNAによるサイの角の識別、地域情報の共有やベトナム政府当局との連携といった活動が含まれる。このほか、wildlife agencies はサイを保護するために、支援団体はもちろん、個人および地域のサイ管理者とも緊密に連携した活動を行っている。
「南アフリカでは、多くのサイが私有地で生息しています。サイの角の備蓄安全管理を含むサイの管理については、サイを所有する人たちの間で改善や調整を行う必要があります。私たちが密猟による危機的な状況と正面から立ち向かうには、こうしたことが不可欠なのです」とIUCN種の保存委員会(Species Survival Commission)の議長Simon Stuart氏は語る。
一部の国では、いまだにシロサイを戦利品とする狩りが行われている。専門家グループは、プロのハンターのなかに問題のある非倫理的行為を見せつける者がいることを指摘するとともに、とくに南アフリカの一部の州では、狩猟許可申請の割り当てとチェックの管理体制を改善するが急務であるとしている。
NPO法人 野生生物保全論研究会のHP http://www.jwcs.org/
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