カメルーン政府、ブッシュミートの取引を規制
2010年2月4日 Divine Ntaryike/Douala, Cameroon
翻訳協力:遠藤有美 校正協力:神田美恵
野生生物保護活動家によると、カメルーンでは、保護種がこれまでにないほどの危機に瀕しているという。野生動物の肉、すなわちブッシュミートの人気が続いているため、武装した密猟者が何十万頭もの動物を銃で撃ち殺しているというのが専門家の指摘だ。しかし、政府はこの違法取引を阻止するために新たな戦略を導入した。
「カメルーンのあらゆる場所でブッシュミートを売っている人を見かけますが、その行為は多かれ少なかれ、我々の尊厳、そして違法な密猟と戦うとした公約を傷つけるものです。」
カメルーンでは内陸部から都会の中心部に至るまで、物売りたちが燻製にしたサルやゴリラ、ヘビ、アンテロープ、ワニなどを公然と店先に並べており、これらの動物は減少しているカメルーンの森林で捕獲されたものである。密猟防止法があるにもかかわらず、ここ数年、実入りのいい野生動物の肉の取引が活況を呈してきた。
世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature)やWorld Conservation Society などの環境保全団体は、現在のこのペースでは、今後20年で絶滅危惧IA類に指定される種が完全に失われることになるだろうと警告している。
カメルーンのMinister of Forests and WildlifeであるElvis Ngolle Ngolle氏 は、この現状は言語道断だと語っている:「カメルーンのあらゆる場所でブッシュミートを売っている人を見かけますが、その行為は多かれ少なかれ、我々の尊厳、そして違法な密猟と戦うとした公約を傷つけるものです。」
政府はこれまで、積極的に密猟の阻止へ取り組んできており、Minister of Forests and Wildlifeは違法取引を取り締まるために警察や軍、環境保全団体と連携してきた。
鉄道や木材運搬トラック、公共交通機関でブッシュミートを市場まで輸送することを禁じ、また、この問題の重要性について国民に敏感に反応させようと試みるために多くのラジオキャンペーンを行ってきたが、こうしたキャンペーンを行っても、野生動物の肉への需要の高まりを止めることはできなかったとの声が上がっている。
大量の野生動物の肉が市場に出回り続け、取引業者を潤わせている。こういった業者たちは僻地にパトロール隊員の見回りがないことを悪用したり、あるいは金を握らせて検問所を通り抜けたりしているのだ。
野生動物の肉を扱う業者によれば、政府が他に収入を得る方法を提供するまで、この取引を抑えることはできないという。ある女性は匿名を条件にこう語った。ブッシュミートの取引をすることが保護動物を深刻な危機にさらしていることは十分わかっているが、子どもを学校に通わせたり、薬を買ったりするためには、この商売の売上金が必要だ。世界的な経済危機の影響を受けて、昨年、夫が木材会社の仕事を失って以来、自分が家族で唯一の稼ぎ手となってきたのだと。
環境保全団体であるThe Last Great Apes (LAGA)によると、不法所持の大口径ライフルで武装したハンターたちがグループを組み、野生動物の肉や象牙を求めてカメルーンや近隣諸国で年3,000頭のゴリラ、400頭のチンパンジー、4,000頭のゾウを殺しているという。
カメルーンで野生生物保護法が制定されたのは、1994年のことである。この法律は絶滅危惧種の売買や不法取引を厳しく禁じており、罰則は5億フラン(約100万米ドル/約8,900万円:1ドル=89円 2010年3月9日付)の罰金から終身刑までとされている。しかし、6年前に最初の違反者が起訴され、収監されるまでは、行政の官僚主義の影響でこの法律の施行が遅れていた。
それ以降、LAGAはカメルーン政府がこの法律を実行するのを支援してきた。LAGAは覆面捜査官を使って野生生物の違法販売業者を突き止め、検察官に引き渡しており、次第に事態は変化しつつある。現在、平均で毎月2人の販売業者が野生生物保護法違反で逮捕され、罰金を科されるか刑務所に収監されている。
ブッシュミートの不法取引に対する取締りは、新たな局面に入った。先のElvis Ngolle Ngolle氏によると、今年の初め、政府は新たなプログラムを導入したという。「ブッシュミートは、地方当局に指定されたカメルーンの市場や公共の場でのみ販売されるべきです。そうすれば、指定市場で売られていない肉がいずれも違法なものとして見なされるようにするため、エコガード(パトロール隊員)が巡回することが可能になります。」
売買が合法とされるブッシュミートとして、アフリカタケネズミを含む絶滅の危機に瀕していない種などがある。にもかかわらず、ゾウやサル、その他の保護動物の肉を売買する者すべてに対し、政府は罰則を科している。
政府と提携環境保全団体の間で検討されている計画には、アフリカケタネズミやヤマアラシなどの野生動物を販売用に飼育するための農場を創設する案などがある。また、古くからの部族の長やその部族の人々と協力して、危機に瀕している動植物を保護することも提案している。
さらに、forest guard(森林を守る職員)の新しい人材の確保や訓練、身につける武器の改善を行って彼らの能力向上を図る一方で、ブッシュミートを扱う取引業者に対しては、ココアやコーヒーを栽培するプランテーションの開発を含め、農業分野における他の働き口の提供に力を注いでいる。
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