消滅していくモンゴルの野生生物の保護活動
Ch. Sumiyabazar
2010年1月15日(金)Ub Post Mongol News
翻訳協力:桝井二郎 翻訳・校正協力:津田和泉
モンゴルの科学者たちは、過去20年間でモンゴルの野生生物の一部の種が70~90%の規模で数が減少していることを発見した。
多くの場合、これまで多数生存していた、モンゴルマーモットやアカギツネ、コサックギツネなどの種が、「絶滅危惧種」や「希少種」に再分類されなければならなくなっている。
これほど顕著に減少した主な理由が、密猟と、野生生物の体の一部や生産物として、違法取引されることにあるのは残念なことである。
最近モンゴルでは、伝統薬の利用が復活してきた。
幅広い病気に対応した伝統薬には、主に肉や血液、油や獣脂など野生動物由来の成分が含まれている。伝統薬は、ガンなどの重大な症状にさえ用いられている(伝統薬だけではなく、近代的な治療とともに使用することを勧めている)。
伝統薬の利用復活の結果、野生生物と取引する事業者と、野生生物の生成物の加工処理業者の数が最近急増した。
その結果、(そのほとんどが)違法な業務に従事・支援してしまう野生生物を取り扱う人の数が増大した。 この懸念すべき傾向をさらに証拠付けるのが、『野生動植物を使った伝統的治療法』という本が刊行されて、よく売れていることである。
この本が伝統的な治療薬として調剤法を解説している野生生物の種は広範である。アリやシカから、絶滅危惧種の野生の羊アルガリやユキヒョウにまで及んでいる。
野生生物を使った治療薬の中には病気の症状を和らげてくれるものもあるだろうが、モンゴルの野生生物を絶滅させてしまう価値のあるものだろうか。
仏への道を求めた人の言葉に、「野生生物を殺したり、野生生物の体の一部や由来成分を使う者は、野生生物の破滅に個人的な責任があると見なされるだろう」というのがある。
モンゴルには、動物の取り扱いに関する法律が複数ある。例えば動物法では、絶滅の危機にある動物種の皮や骨、体の一部の売買を禁じている。狩猟法では、野生生物の狩猟と罠による捕獲を禁じており、野生生物の取引の違法性を繰り返し主張している。しかしながら、狩猟可能な希少動物の割合を実質的に増やすような新しい法律が通過しつつある。メディア広告法の2002年の条項には、野生生物の体の一部の売買に関する広告の禁止の詳細を述べている特別章が含まれている。加えて、モンゴル自然環境・観光省(MNET)もこのことは禁じており、角、睾丸、尾、卵巣、ジャコウ腺、胆嚢嚢などは取引禁止リストに記されている。
残念なことに、よくあることではあるが、これらの法の執行はおもわしくない。結果として、モンゴルの野生生物の資源は過去にないスピードで減少している。この国内取引に加えて、近年ではとりわけ、中国、韓国、ヴェトナムとの国際取引も増えている。
いくつかの禁止法にもかかわらず、野生生物の一部や由来製品の売買広告はいまだに見受けられる。このことはモンゴルの野生生物に実際的に深刻なインパクトを与え続けるものだと我々は確信している。例えば、2009年11月20日から24日のTV Chat channel TMという番組では、「オオカミの脳、買い手募集」、「冷凍のオオカミの体と熊の手、販売中」という広告を目にした。同じような広告は氾濫していて、中には生きていえる生物(ハリネズミとアナグマ)の販売広告も含まれている。Zar Medee紙では冷凍のオオカミの体の売り出し広告が、Shuukhai Zar紙ではイノシシの生の肝臓の広告が掲載されていたのも発見した。
狩猟法によると、MNETは生物の個体数や種に応じて、狩猟の許可証を発行している。政府の決議では、国外のハンターはアルガリ(野ヒツジ)、アイベックス(野ヤギ)、オグロガゼル(Black-tailed Gazelle)、セイカーハヤブサの狩猟には人数限定の許可証の購入が必要である。これらの許可証は番号と動物の種により厳格にコントロールされている。加えてアカシカ、イノシシ、モンゴルガゼル、特定の鳥と魚といった生物種は、行政当局の許可を得たのちに狩猟が可能になる。それ以外のすべての生物種の狩猟は、モンゴルでは禁止されている。
検査の結果、警察は52のクマの手、214のシカの睾丸と尾、15のジャコウ嚢、11頭のサイガアントロープを、ザミンウドと中国の間で押収した。ウランバートル・スフバータル地区の二人の住人からこれらは押収された。犯人二人rは、動物を狩っていないし、単にこれらのものを市場で購入したと発言している。
我が国の野生動物を保護するにあたって、我々は、法を制定する機関とあわせてメディアには重要な役割があると考えている。不法な取引を継続的に減少させたり停止することで、モンゴルの野生生物の状況は大きく変わるだろうし、徐々に昨今のモンゴルの大きな損失を負っている野生生物の個体数回復にもつながるだろう。
我々は、中央と地方のメディア、市場監督者とトレーダー、狩猟者と一般国民に、手遅れになる前にこの問題をともに解決してこうと呼び掛けている。
1. 野生生物の保護と野生生物の殺傷を回避する効果的な法の執行
2. 希少種・絶滅危惧種の無許可狩猟に関するすべての行動の禁止
3. 野生生物の体の一部や由来製品(生存している個体も含む)の広告に関するすべての行動の禁止
4. 野生生物、野生生物の体の一部、野生生物由来商品の売買と輸出の禁止
5. 市場や土産物店での禁止されている毛皮の販売(アカギツネ、コサックギツネ、ヤマネコ、モンゴルマーモット)の阻止
6. 野生生物・野生生物の体の一部(内臓、骨、肉、脂肪、油、血液)由来の医薬品の製造・販売の防止
7. 狩猟と動物に関する法律のいかなる違反もState Specialized Inspection Agency (モンゴル国家監査局:SSIAと)警察に緊急に知らせること
この記事は、自然環境・観光省(MNET)、国家監査局(SSIA)のNature, Environment, Geology and Mining局、モンゴル狩猟家協会と野生生物保護協会(WCS)モンゴルプログラム事務局の共同提案である。
http://ubpost.mongolnews.mn/index.php?option=com_content&task=view&id=4267&Itemid=36
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