漁業関係者をおそれるあまりマグロ絶滅の危機
2010年1月14日 / 05:00 CET(中央ヨーロッパ時間)European Voice
翻訳協力:武田萌子 校正協力:津田和泉
間近に迫る欧州委員会が正念場となる
またも漁師からの抗議に直面している欧州委員会の議事日程に、臆病さや引き延ばしが見受けられる。
委員会は、絶滅のおそれのある種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species:CITES)の会議に先立ち、クロマグロに関する有利な態勢を整えていると思われる。
地中海沿岸のEU加盟諸国を懸念しないのであれば、委員会はクロマグロの取引禁止を強化すべきである。
おそらく一時的な禁止だが、いずれにせよ禁止である。
委員会は実際、禁止を望む環境委員Stavros Dimas氏と禁止に反対の漁業委員Joe Borg氏の間の意見の相違によって身動きがとれず、曖昧な態度を示している。
大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)はクロマグロの漁獲抑制に同意したので取引禁止は必要ない、というのがBorg氏の意見である。
Borg氏の快活な楽観主義は、彼の立派なところである(マグロを救うことにはならないが)。
漁業委員として五年、彼は(それが誤ったものだとしても)、漁獲制限の効果で厚い信頼を得ている。
彼は経験から違うことを学ぶべきだが、削減された漁獲割当量はちゃんと守られ、水揚げ高の報告は向上されると信じているようである。
これは無謀と言って差し支えないに単純さである。過小申告あるいは非申告は、この手の分野では特有である。EUの監査役は、漁業採捕の真のその量は不明であることを指摘している。
Borg氏がICCATの審議から得るべき結論は、クロマグロの見通しは非常に緊迫であり、専門家の推奨よりはるかに高い漁獲水準を置くICCATですら何か着手しなければならなかったのだと気付くべきということである。
ICCATの制限は、おそらく取引禁止など過酷な法案を回避するための試みであり、Borg氏の意見が取り入れられたわけではない。
クロマグロは非常に速い速度でEU水域から消滅へと向かっているため、ICCATの漁獲抑制は国際取引禁止によって強化されるべきである。
当然、操業するEU加盟国及び沿岸諸国にとっては受け入れがたいものだろう。ギプロス、フランス、ギリシア、イタリア、マルタ、スペインは、このような禁止に以前から反対している。
しかし、それは委員会が引き下がるべきだということを意味してはいない。委員会の義務は、クロマグロが存続できない速度で減少しているという苦しい事実に肉迫することである。
これは、地中海沿岸に限定した問題ではない。クロマグロの市場は、需要と価格の押し上げを引き起こしている凄まじい日本の需要と共に世界的な市場であるため、世界的な問題となっている。世界的な問題であるため、取引禁止は適切である。
委員会は情報から得られる妥当な結果を考え、クロマグロが絶滅の危機に面していることに気付くべきである。
絶滅の間際になり、振り返って何もしなかったと言いたいか、少なくとも絶滅をとめようと試みたと言いたいか、委員会は自問自答すべきである。
もし取引禁止が同盟国によって否定されるのであるならば、それを受け入れよう。各国政府は彼らの行いに応えなければならない。しかし、委員会はこのような将来よりも現在の利益を考える短期主義に打ち勝つと思われる。
皮肉にも、委員会は生物多様性の減少をとどめる議案書を出そうとしている。
委員会は、生物多様性の減少を地球温暖化と一緒に、主たる世界的な環境問題として述べている。
生物多様性問題からクロマグロの運命まで全体を解釈することはそれほど難しくはない。大きさ800kgまで成長しうる巨大な魚が海から消滅するのは、大問題であろう。委員会は、取引禁止の支持で団結すべきである。
http://www.europeanvoice.com/article/imported/too-scared-of-fishermen-to-protect-tuna-/66857.aspx
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