アジアとアフリカでサイの密猟が急増
2009年12月1日|IUCNニュース-プレスリリース
翻訳協力:瀧口暁子 校正協力:津田和泉
TRAFFICとIUCNの最新の報告書によると、世界的なサイの密猟が増えている。
取引はアジアでの角の需要により後押しされ、サイを殺すために今では獣医用の薬、毒、クロスボウ、そして高度な武器を使うようになり、ますます巧妙になった密猟者の存在により、さらに悪化していると報告書は伝えている。
最新のデータによると、2006年以来、アフリカの密猟の大半(95%)はジンバブエと南アフリカで起こっている。「これらの二つの国は、集合的に、南部アフリカの勢いの衰えない密猟の危機の中心点を作っています」と、TRAFFICのTom Milliken氏は語った。
3月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(CoP15)に先駆けて、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)に提出されたレポートは、法的処置の効果の減少と、アフリカでの密猟の深刻さの増加を考証している。状況は、今ではサイの生息数が減り始めているジンバブエが一番深刻で、ジンバブエにおけるサイに関する有罪判決率は3%にすぎない。新しい政策がいくつも導入されたにも関わらず、南アフリカでの密猟と違法な角の取引もまた、増加している。
「最高レベルでの断固とした法的措置が、この世界的に蔓延するサイの密猟の危機的状況を止めるために必要とされています」とWWFインターナショナルの種のプログラムの責任者Amanda Nickson氏は語る。「われわれは懸念されている国に、この密猟を止め、野生のサイを保護するための彼らのかかわりあいを示すために、取り掛かった特定の措置とともに、3月のCOP15に参加するように呼びかけています。」
報告書はまた、マレーシア、インドネシア、そしてベトナムにおけるスマトラサイとジャワサイの、そもそも数が少なく減少している生息数と、一部生息数の不明確な状況に関しても関心を寄せている。
「スマトラサイとジャワサイが生息している国々では、サイの生息数に関する現在の状況のより詳しい評価を得るための一層の努力、これ以上の土地の浸食と変質を防ぐこと、そして、数少ない残存するスマトラサイとジャワサイの生息数が増加するように生態系の管理を向上すること、が必要です。」と、IUCN/SSCアジアサイ特別グループの代表、Mibhab Kumar氏は述べた。
南部アフリカを離れたサイの角の多くは、南東アジアと東アジア、特にベトナムと中国での医療市場へと向かう。報告書によると、サイに関する犯罪調査により、南アフリカでベトナム国籍の人間が南アフリカで暗躍しており、ベトナムは特定の関与をしていると述べられている。加えて、ベトナムのあるジャワサイの生息数の状況に関しても懸念が述べられている。
しかしながら、報告書によると、地域によってはサイの生息数が増えているという。「政治的な意思、熱心な保護活動、そして機能する法執行がある場合、サイの生息数はアフリカ、アジア両方において増加しています」と、IUCNのクロサイ専門家グループの科学官のRichard Emsile博士は述べた。
IUCNのサイ専門家グループとTRAFFICはCITESによる報告を作成するよう委託された。報告書のデータ訂正と作成の一部は、WWFとそのパートナーにより提供を受けた。
http://www.iucn.org/?4289/Rhino-poaching-surges-in-Asai-and-Africa
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