ケニア、象牙取引問題でタンザニアと対立
Wangui Maina
2010年1月5日火曜日20時34分投稿
翻訳協力:梅村佳美
ケニアは、3月に予定されている野生生物保護に関する国際会議において、象牙取引の全面禁止を求める意向である。同国内では密猟により、ゾウが絶滅の危機にさらされている。
このケニアの姿勢は、タンザニアの反感を買う可能性が高い。タンザニアは、保護対策資金のため、自国で保管している在庫象牙の販売許可を得ようと、新たな取引の機会を求めているからである。タンザニアへは、同様の販売許可申請を行っているザンビアなどの国々が協力する模様であるが、前回の会議で一回限りの象牙の販売を許可されたボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエは沈黙を守っている。
アフリカゾウ保護の動きが1980年代に活発化して以来、ケニアは、象牙取引全面禁止を要求する上で中心的な役割を果たしてきた。ナイロビ国立公園において数百万円(1ケニアシリング=1.20円 2010年1月20日現在)相当の在庫象牙を焼き払って、自国の思いを劇的に表現したこともある。
カタールで開催される会議は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約、CITES)の第15回締結国会議である。「ケニアは、ゾウやサイなどの絶滅危惧種に関するいかなる取引に対しても反対します。と、Kenya Wildlife Service(ケニア野生生物公社、KWS)の総裁であるJulius Kipng’etich氏は述べた。
同氏によると、わずかであっても取引が許可されれば、この地域での密猟増加につながる恐れがあると述べた。しかし、ケニアが、2007年に禁じられた象牙取引の再開に強く反対し続ける一方で、ザンビアとタンザニアは、1989年以来行われている象牙取引禁止措置を解除するよう求めている。この措置は、密猟増加により個体数が減少しているアフリカゾウとサイを保護するために導入されたものである。
しかしケニアは、こうした販売の許可が与えられれば、市場の欲求を刺激し、この地域での密猟を増加させるだけだと主張している。
ケニアのNoah Wekesa森林・野生生物省大臣の最近の話では、ケニアはタンザニアから何の相談も受けていないという。両国はAmboseli(アンボセリ)やMt Kilimanjaro(キリマンジャロ)などの国立公園を共有している。
大臣によると、タンザニアと同様の生態系を有するケニアでは、密猟によって殺されるサイとゾウの数が増加傾向にあるという。大臣は最近、ヨーロッパから4頭のサイを受け入れた際にこう語った。
ケニアではサイとゾウの密猟が増加しており、密猟で殺されたゾウの頭数は、2007年には47頭であったのに対し、2008年では145頭、2009年にはその数が200頭を超えた。
密猟により、ケニアのゾウの生息数は、1969年の16万8000頭から1989年にはわずか1万6000頭にまで減少したが、象牙取引が禁止されてからは、なんとかその数を3万5000にまで増加させることができた。一方でサイの生息数は、1989年に400頭であったのに対し、600頭を超えるようになった。
タンザニアとザンビアは2009年11月に、ワシントン条約附属書ⅠおよびⅡの修正を求める提案を行った。
両国は、押収された象牙や出所のわからない象牙を除く自国の在庫象牙を一回限りで販売する許可を求めている。その販売による売り上げは、ゾウやその生息地域の保護、開発計画に使用されるとしている。
タンザニアは、自国の在庫象牙8万9848キロの販売を希望しているのに対し、ザンビアは2万1692キロの象牙および生皮の販売を希望している。
両国の提案は、ケニアを筆頭に、コンゴ、ガーナ、リベリア、マリ、ルワンダ、シエラレオネからも反対を受けている。
こうした現在の意見の対立は、2007年6月に開催された前回のワシントン条約締結国会議で展開された同様の討論を反映したものである。前回の会議では、南アフリカ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナの南アフリカ諸国が取引禁止の解除を求めた。
これらの国々は妥協案として、中国と日本の買い手に一回限りで1.8トンの象牙を販売する許可を得た。
ケニア野生生物公社は、同国で2008年にゾウの死亡数が増加したのは、南アフリカ諸国によるこの一回限りの象牙の販売が原因であるとしている。
ケニアは、反対する他の国々と共に、再度象牙取引が開放されれば、市場に出回る象牙すべてに対しDNA検査を行ってしっかりとした出所をつきとめない限り、需要を高めるだけだと主張している。
http://www.businessdailyafrica.com/-/539552/836638/-/item/1/-/cqjpnfz/-/index.html
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