サオラを絶滅の危機から救う最後のチャンス
2009年9月3日 IUCN Press Releases
翻訳協力:黒木 摩里子、校正協力:津田 和泉
世界で最も謎の多い哺乳動物の一種、サオラ(Pseudoryx nghetinhensis)が絶滅の危機に瀕している。サオラの保護に取り組むためラオスで緊急会合を開いた専門家グループはこう述べた。
サオラは1992年にようやく新種の野生生物であることが発見された。アラビア半島の砂漠地帯に生息するアンテロープに似ているが、野生牛とより近い類縁関係にあり、ラオスとベトナムの国境沿いに走るアンナン山脈の人里離れた渓谷に生息している。
「この極めて珍しい動物を保護するチャンスの扉は、まだ小さいにもかかわらず今にも閉じられようとしており、我々は動物保護の歴史における岐路に立たされています。」
IUCN(国際自然保護連合)Asian Wild Cattle Specialist Groupにより設立されたSaola Working GroupのコーディネーターWilliam Robichaud氏はこう述べた。「その扉は、野生牛の他種クープレーに対してすでに閉じられてしまったかもしれません。今回の会合に集った専門家たちは、次がサオラの番になってはならないと固く決意しています」。
4カ国を拠点に保護活動にあたっている生物学者たちは、先月ラオスの首都ビエンチャンに集合し、サオラは1992年の発見時、すでに希少で生息が狭い範囲に限定されていたが、発見以降もその数は急速に減少しているという見解で一致した。
専門家らによれば、サオラが急速に絶滅へと向かっている今日の状況は、ジャワサイのような東南アジアに生息するわずか2~3種となってしまった大型哺乳動物の状況に類似しているとみられる。サオラが動物園に1頭もいないという事実もこの状況をさらに悪化させている。
「サオラの人目をひく顔面の白い模様と長細い角には他の動物に見られない美しさがあり、またアンナン山脈の湿地の森林で孤立して生きる習性により謎に満ちた雰囲気も持っています。」IUCN Asian Wild Cattle Specialist GroupのBarney Long はこう述べた。「サオラはめったに目にすることができませんし、写真に撮られることもありません。これはサオラが捕らえられてしまうと生き続けることが困難な動物であることを証明しています。世界中のどの動物園を探してもサオラはいないのです。野生集団はわずか数十グループとされており、個体では最大でも数百頭しかいないことが確認されています」。
サオラはIUCNによる絶滅の恐れのある野生生物(Threatened Species™)レッドリストのランクで滅危惧IA類(Critically Endangered[CR])に指定されており、これは「野生での絶滅の危険性が極めて高い」ことを示している。サオラが動物園にいない、また捕獲した後に生命を維持させる方法がほとんどわかっていないこと。これは絶滅の危機にあるサオラにとって、回復し自然に戻るチャンスがなくなり、どんな場所でも絶滅を迎えてしまうことを意味している。
サオラは第一に狩猟という危機にさらされている。非常に傷つきやすい動物であるため、サオラを脅かす一番の原因は、罠および犬を伴った狩猟であることが今回の会合で確認された。
会合に参加した専門家らは、アンナン山脈森林の重要な区域における密猟および犬を伴った狩猟を撤廃しない限り、サオラを救うことはできないと強調した。また生物学者らによれば、サオラを保護する必要性を理解するために、野生の地でサオラを探索する方法および無線追跡の改善が必要とされる。
さらに専門家グループは、サオラの危機的状況をラオス、ベトナムおよび世界中の保護団体に対してさらに認知させること、そしてサオラの保護に対する支援金を増やすことが必要であると述べた。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
サオラは絶滅しそうになるのはかわいそうだとおもいます。
投稿: かすみ | 2012年12月30日 (日) 14時31分