バードライフ・インターナショナル 過去最高数の絶滅危惧IA類の鳥類を発表
2009年5月14日 バードライフインターナショナル
翻訳協力:井澤佳枝 校正協力:津田和泉
バードライフ・インターナショナルによる最新の世界鳥類評価によって、これまでにない多くの種が絶滅の危機に瀕していることが明らかになった。実に1,227種(全鳥類の12%)もの鳥が現在、世界的に絶滅が危惧されている鳥類として分類されている一方で、保護活動が適切に行われれば、多くの種が守られるという明るいニュースもある。
「世界的に見ると、鳥類を取り巻く環境は悪くなり続けていますが、今年の実際に成功した保護活動の話は私たちに希望を与え、進むべき道を示してくれました。」とバードライフ・インターナショナルの科学および政策部長のレノン・ベナン博士は述べた。
希少種の中で最も希少な種の数の増加
バードライフ・インターナショナルが国際自然保護連合(IUCN)に代わって行っている年次レッド・リストの最新版には、最も絶滅危惧度が高い絶滅危惧IA類として、現在192種の鳥類が掲載されている。これは2008年度より2種増加している。
最近コロンビアで発見されたGorgeted Puffleg(ハチドリの一種)は、今回初めて絶滅危惧IA類としてレッド・リストに掲載された。この華やかな色合いのハチドリは、コロンビアの南西部に広がるピンチェ山地に残るわずか1,200ヘクタールの雲霧林を生息地としている。しかし、その地域はコカイン栽培のため毎年8%ずつ失われている。
エチオピアのリベン平原のエチオピアニセヤブヒバリも土地利用の変化により、絶滅危惧IA類に格上げされ、アフリカ大陸で初の絶滅種となる危機にある。また、チャールズ・ダーウィンの生誕200年に合わせるようにガラパゴスフィンチの一種であるダーウィンフィンチも外来種の寄生バエの影響もあって絶滅危惧IA類となった。
普通種の鳥の減少
しかし、ますます希少になっている希少種だけでなく、普通種も見かけにくくなっている。北米東部では、エントツアマツバメが急速に姿を消しつつある。ここ10年だけで北米全土で30%近く数が減少したことを受け、この普通種は準絶滅危惧種に格上げされた。
「アフリカ全土で多く見られる猛禽類も驚くべき速さで姿を消しつつあり、その結果、ダルマワシやゴマバラワシといったアフリカを代表する種の絶滅危惧度も格上げされました。このような減少はどの大陸でも多くの種が直面しています。」とバードライフ・インターナショナルの世界種のプログラム・オフィサーであるジェス・バード氏は述べた。
「世界的に見ると、鳥類を取り巻く環境は悪くなり続けていますが、今年の実際に成功した保護活動の話は我々に希望を与え、進むべき道を示してくれました。」とバードライフ・インターナショナルの科学および政策部長のレノン・ベナン博士は述べた。
意思のあるところに道あり
しかし先行きが暗いわけではない。今年のレッド・リストには、保護活動が実を結んだ素晴らしい成功例が複数載っている。ブラジルではコスミレコンゴウインコが絶滅危惧IA類から格下げされている。
イギリスの詩人にちなんで名づけられたこの鮮やかな青いオウムの数は、多くの国内外のNGO、ブラジル政府や地元の土地所有者が一体となった取り組みの結果、4倍に増加した。
ニュージーランドではチャタムミズナギドリがニュージーランド自然保護局の努力の末、絶滅危惧IA類から格下げされた。また、モーリシャスでは美しいモーリシャスベニノジコを捕食動物のいない離島へ移動させ、そこで新たな繁殖地を定着させて絶滅の危機から救った。モーリシャスベニノジコは現在、絶滅危惧IB種に格下げされている。
また絶滅危惧IA類32種に対する同様の活動もバードライフの絶滅阻止計画の一部として進められている。
「チャタムミズナギドリとモーリシャスベニノジコは共に外来種の侵入により絶滅の危機に陥ったので、外来種対策はバードライフが明らかにした今後の鳥類の絶滅を阻止するための10個の必須措置の1つです。今年のレッド・リストの分類の変更を受けて、このような絶滅危惧種を取り巻く環境をまだ好転させる余地があることがわかりました。行動しようという意思とそれを支える資源が必要なのです。」とバードライフの世界調査および指針コーディネーターのスチュアート・ブチャート博士は述べた。
「世界中で保護活動の成功例があるにもかかわらず、レッド・リストに載っている絶滅危惧IA類の数が増加し続けているのは非常に憂慮すべきことです。レッド・リストは、種の喪失を測る世界標準です。ですから、私たちは各国政府に対し、このリストに示された情報を真摯に受け止め、世界中の鳥類を保護する最適な基準を設けるよう強く主張します。」とIUCNの種存続委員会主席のサイモン・スチュアート氏は述べた。
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