ケニアでゾウの密猟が新たに激増
中国人労働者の流入とアジアでの需要により、ゾウの密猟が急増
2009年5月3日 ナイロビ GlobalPost Tristan McConnell記
翻訳協力:佐藤良子 校正協力:津田和泉
密猟されたゾウから切り取られた象牙を、中国人労働者が不法取引によって購入している。このためケニアで最も有名な野生生物保護区で、ゾウの生息数が激減する恐れがあると報告されている。
おもにアジアからの需要による市場に対して、年間に何千というアフリカゾウが殺されている。昨年9年ぶりに合法的な象牙取引が行われ、独占的に競売に参加した中国と日本のバイヤーが落札を争った。数億円に及ぶ取引の中で100トンを超える象牙が売却された。
このような象牙競売の復活、またアフリカにおける中国人労働者の増加を受け、近年になってようやく密猟による乱獲から回復してきたゾウへの影響が再び危惧されている。
Amboseli地域でゾウの保護活動を行っている非営利団体、Amboseli Trust for Elephantsは、「過去1年、とりわけこの4カ月間でAmboseli(アンボセリ)国立公園に生息するゾウの状態は危機的な局面を迎えています」と警告した。同団体を運営するベテラン自然保護活動家、Cynthia Moss博士は、37年間にわたり約388.5平方キロメートル(150平方マイル)に広がる同国立公園で保護活動を続けている。
Kenya Wildlife Service(ケニア野生生物公社)の生物多様性・調査部のPatrick Omondi氏によると、ケニアは2008年、密猟のために98頭のゾウを失い、その数は2007年に比べ2倍に増加したという。けれども、同氏はアンボセリ国立公園のニュースをとりわけ憂慮しており、「アンボセリ国立公園で密猟が起こったのは、ここ10年間で初めてのことです」と話した。
この程起こったケニア人とタンザニア人の逮捕が、この問題の深刻さを事のほか物語っている。Marchで逮捕された2人は、およそ35-40頭のゾウから取られた約513キログラム(1,129ポンド)の象牙を所持していたとされ、3月に始まった裁判で罪状を認めた。この度の押収は、長年、東アフリカで起こった事件の中でも最大のものである。
アンボセリ近辺のTsavo(ツァボ)国立公園で、6週間に5頭のゾウが殺戮された事件を受け、IFAW(国際動物福祉基金)もまた、ゾウの密猟増加を警告する声明を発表した。
「昨年の終わりに、南部アフリカ諸国が一回限りの合法的な象牙取引を行って以来、ゾウの密猟がかつてない規模で増加しています」とツァボ国立公園次長のJonathan Kirui氏は話した。
Omondi氏によると、ケニア野生生物公社は、ゾウの密猟が急増しているのは、同国における中国人の増加に関連していると見ている。中国は、ケニアにおけるインフラ建設への投資の見返りとして鉱山開発権を取得しており、道路・鉄道・ダム建設のために、中国人労働者が大量にケニアに流入している。
「ケニア全域の中には、中国人の野外キャンプが2つあります。情報提供者の話によると中国人が象牙とブッシュ・ミートを買い付けているというのです。」と、アンボセリ・トラスト・フォー・エレファンツは報告している。
1989年、象牙取引は国際的に禁止されたが、それ以前の10年間で、アフリカにおけるゾウの個体数は130万頭から60万頭に激減した。ケニアが象牙取引により被った影響はより深刻で、禁止令が施行されるまでの15年間で、この国に生息するゾウの85パーセントが殺戮された。
1989年以来、ゾウの個体数は劇的に回復しているが、極東では、象牙は現在も非常に高い価値があり、薬、装飾品、印鑑のために用いられている。
http://www.globalpost.com/dispatch/kenya/090326/elephant-poaching-problem-kenya
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