漁獲解禁にともなう地中海クロマグロの個体数激減
2009年4月14日 WWF HP
(翻訳協力 山崎千佳子 校正協力:津田和泉)
イタリア・ローマ– 地中海の漁業解禁で急増したクロマグロ漁船の本格的な活動に対し、WWFは現行通りの操業を継続すれば2012年までにクロマグロが絶滅するとの見通しを発表した。
世界自然保護基金WWFは養殖マグロの数がここ数十年で激減しており、漁業経営者や関係者が科学委員会の警告を無視し続ければ3年以内に絶滅するとの見通しを明らかにした。
「地中海クロマグロは絶滅の危機に瀕しており根拠となるデータもある」。WWF地中海の漁業担当者Sergi Tudela氏は言う。「あらゆる視点から見て、地中海クロマグロの絶滅は急速にすすんでおり、深刻な状況は今この時にも進行しているのだ」
「WWFはこの捕獲をすぐに中止するよう今一度呼びかけることしかできない」
繁殖可能なマグロ(生後4年以上体重35kg以上)がほぼ漁獲され尽くされているといえる。2007年の養殖マグロの割合は50年前の4分の1であるがとくに近年の激減は顕著である。
一方成熟したマグロは1990年代以来半減している。例えば、リビア海岸地帯のマグロの大きさは平均124kg(2001年)から65kg(昨年)になっている。WWFが収集したデータによればこの傾向は地中海全域に見られる。
大規模な漁業産業が興る前は900kg以上のマグロも生息していたようだ。このような巨大マグロは中サイズのマグロよりも繁殖能力がある。巨大マグロの消滅はクロマグロが種として存続するうえでかつてない影響を受けていることのあらわれだ。
この海域で操業する漁船の漁獲能力は明らかに過剰となっており、法的に設定された割当量をはるかに超えて漁獲している。さらに密漁や魚群探索のためのセスナ利用、漁獲量の過小報告や禁漁期間中の違法操業も止まらない。また、科学委員会の勧告に従おうとしない漁業管理機構や世界的なクロマグロ需要が依然として存在することも、こうした急激な資源量減少の一端を担っていると言えよう。
「ここ数年、私たちはいつクロマグロ漁が崩壊するのかと問われてきましたが、今回の分析でそのめどがついたことになります。しかし、15日にはこれまで通りクロマグロ漁が解禁になり、漁獲対象魚種が壊滅的な状況にある中で操業を解禁することは、極めて不合理であり誠に遺憾です。」とTudela博士は述べる。
WWFでは地中海クロマグロ資源の回復のために、まずはクロマグロ漁について緊急に禁漁措置をとることを提案する。さらに、危機的状況にある地中海クロマグロの枯渇を回避するべく、各国消費者、小売業者、外食産業など消費側へ協力を引き続き求めていく。
さらに、2010年のワシントン条約会議において大西洋クロマグロを条約に掲載することで国際的なクロマグロ貿易を一時中断することを支援する気運も高まっている。
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