道路におびえるアフリカゾウ
The Telegraph 記者 Paul Eccleston
2008年10月28日
(翻訳協力:平野容子、編集協力:中塚雪路)
アフリカの森林ゾウたちは、道路を見ると密猟者ー自らの死を連想しておびえていると研究者たちが報告した。
中央アフリカのコンゴ盆地は密猟が横行している地域で、ここに生息するゾウは「道路すなわち危険」と見なすようになった。
研究者たちは、ゾウにとって道路は刑務所と同じで彼らの行動を阻害し、恐怖を抱かせる存在となっており、そのため同じ地域内に留まり孤立していることをつきとめた。
「野生生物保護協会(WCS)」および「Save the Elephants」 の調査によると、道路が新たに建設されることで、ゾウはそれまで移動した範囲への移動をしなくなり、かなり活動範囲が狭まっているとのことだ。
かなり広い自然保護区域でも、道路が建設されるとゾウは道路に近寄らなくなるため、恐
らくもうゾウの広い行動圏は中央アフリカのどこにも存在しないと研究者たちは述べている。
28頭のゾウの首に発信機をつけ、衛星からその行動を追跡して行った調査の結果、特に公園や保護区域の外側に建設された道路には密猟者が多く、そのため道路がゾウの行動の障害物となっていることがわかった。
従来ゾウは、保護区域内の道路を横断して移動していたが、追跡調査では道路を横断して区域内を移動したゾウはわずか1頭で、それも通常の14倍の速さで移動していた。
コンゴ盆地は、世界でも第2位の大きさを誇る熱帯雨林地域が存在し、多種多様な生物が生息している地域であるが、現在、道路建設が急ピッチで行われているため、自然保護区域が狭まり、ゾウの生息数が急減するだろうと報告書で警告している。
ゾウが道路に近づかないため、密猟者から狙われることはないが、エサを求めて広い区域を移動することができなくなり、食欲が満たされず、仲間のゾウと限られた資源を奪いあい、その結果過剰に植物を食べることになる。
報告書によると、実際、遺伝子上、少数の分断された生息数で活動するため、絶滅の危険が増加しているとのことだ。
今回の調査の指導者であるStephen Blake博士は、「森林に生息するゾウは道路で作られた牢獄の中で恐怖を抱いて生活している。ここに生息するゾウは生息地である広い森林で生活する巨大な生物というよりは、林の中でおびえるネズミのようだ」と指摘する。
また同氏は、「アフリカゾウは、高まる恐怖、飢餓、病気、ストレス、仲間内での争い、社会的な分断といったイメージの中に囚われています。」と述べている。
報告書によると、コンゴ共和国と隣国ガボンで行われた調査では、6か所のうち3か所で、新しく建築された道路により野生生物の生息地域が大幅に狭められていた。しかし、研究者たちは、野生地域における道路建設計画を見直し、密猟の危険を減少させることはまだ可能だと述べている。
「森林地域で生活する貧しい人々や野生生物、自然環境を考慮して、実現可能な範囲で建設計画を少しでも見直すことで、ゾウやその生息地の保護に大きな助けとなるだろう」とBlake博士は述べている。「森林ゾウが一息つけるような道路建設を計画すれば、少なくとも森の奥深くでゾウはリラックスして生活できるし、また道路に伴う密猟で恐怖を抱いたりゾウが死んだりすることも減るだろう。わずかなコストで野生生物保護に大変重要な意味をもたらすことになろう。」
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