インドネシアのマーケットでの不正取引で野生生物が危機に
AFP通信 2008年7月16日 ジャカルタ発
(翻訳協力:大高陽子・編集協力:石井紀子)
インドネシアでは、首都中心部の市場でトラ皮や檻に入れられた希少な霊長類動物が堂々と販売されており、これは野生動物の不正取引が全く臆面もなく横行していることの表れである。
群島国家インドネシアは、その広大な森林を破壊する巨大ビジネスとの対決に手を焼いている。彼らはそこに生息する絶滅に瀕する動物たちを世界中に売ることで膨大な利益を得ているのである。
汚職が蔓延して政情不安な状況下で警察と森林局の役人はほとんど何も手を出さないのだと保護活動家は言う。
活動家と政府によると、希少動物はその生死に関わらずひとたび海外の市場に出れば高値で取引される為、インドネシアは不正取引により年間少なくとも8000万ドル(約850億円 2008年9月12日12時7分現在)を失っているという。
「興味深いことに、ボルネオ島カリマンタンで捕獲したオラウータンはせいぜい300万ルピー(約35,000円 2008年9月19日13時17分現在)で取引され、ジャカルタでは500万ルピー(約37,000円 2008年9月19日13時17分現在)で売買されている」
非政府組織ProFaunaに所属するAsep Purnama氏は言う。
「しかしひとたび台湾に持ち込まれれば、約1億ルピー(約113万円 2008年9月19日 13時19分現在)で売買され、ヨーロッパでは約4億ルピー(約455万円 2008年9月19日 13時19分現在)で取引されることになるのです」Purnama氏はさらにカリマンタンの森だけで年間100匹ものオラウータンが捕獲されていると言う。
Purnama氏の属する団体では、2007年にはスマトラ島だけに見られる動物1万匹が密猟され不正取引に利用されたと見積もっている。
カリマンタンやスマトラから直接海路でマレーシアやフィリピンに輸送される動物もいるが、大部分がインドネシアの主要都市に存在する動物市場を介して取引されているとPurnama氏は述べてる。
「市場の野生動物の不正取引は密猟の結果なので、市場の不正取引をやめることが密猟そのものを減らすことにつながるでしょう」と言う。
ジャカルタのジャティヌガラから歩いてすぐのところに活気に溢れる市場がある。
スマトラ島産のつぶらな瞳が特徴の希少なスローロリスが中流階級の家庭のペット向けに10ドル(約1000円 2008年9月12日 12時15分現在)足らずで売られていた。
見た目にかわいいこの動物を売買することは不正であり、捕らえられたストレスで数週間以内に死んでしまうということを買い手の大半は知らないようだが、売り手は知っており、そのためか写真を極度に嫌う。
ジャティヌガラの宝石市場から数百メートル(ヤード)離れたところで商売するひとりの商人が、売り物のトラ皮を喜んで見せてくれた。彼女の話では、それは10年以上前に捕えられたトラの皮で、骨や肉といった特に値打ちのあるパーツはだいぶ前に中国やシンガポールに売ってしまったという。残りの部分はハンドバックくらいにしかならないという。
ジャカルタ動物救済ネットワーク(JAAN)のFemke den Haas氏によれば、ジャティヌガラをはじめジャカルタの動物取引の大半は、東南アジア最大の巨大なPramuka鳥市場を通して売買されている。時々行われる取締りでは、絶滅の恐れがある動物の中でも特に危機に瀕している動物が堂々と売買されているのが摘発されるが、世界中からトラの子供や象牙といった希少価値のある商品を求める注文がいまだにあるという。「大きい物は市場の裏手にある家から手に入れ、オラウータンなど更に大きなものは注文しなければならない」とも言う。
JAANをはじめとする非政府組織による調査で、希少な鳥は国の東部にあるパプアからフェリーで輸送され、希少動物はスマトラからエアコン付きのバスで輸送されていることがわかった。「動物を輸送しているのはすべて年配の女性なので、われわれは彼らを『グランドマザーマフィアネットワーク』と呼んでいます」den Haas氏は言う。
厳重な取締りを要求する一方で保護活動家が指摘していることは、当局が堕落したり資金不足であったり、問題の認識不足であったりすることである。「起訴するには、裁判官に金を支払い、警察に金を支払い、警察の檻の中にいる動物たちの食料にお金を出さなければならないのです」
「裁判制度が長く時間がかかるのは、裁判官ですら『この種が保護されているとは知らなかった。私は家に海がめを2匹飼っている』などと言うほどだからです」den Haas氏によると、これは最近の裁判で起こった本当の話だという。
「定期的な取締まりは今も行われており、取締りによって以前より改善されているのは明らかです」生物多様性保存省のトップToni Suhartono氏は述べる。
しかし保存省は強制捜査に小規模のチームしか召集できず、動物マーケットの曲がりくねった路地で簡単に裏をかかれてしまうことが多いという。
「野生動物の取引人はとても狡猾なのです」とSuhartono氏は言う。「現地に人を派遣すると彼らは逃げる。いたちごっこなのです」また、裁判所が決定する罰金が少ない為、たとえ取締りが成功しても強い抑止力にはならないという。
省内の堕落も、取締まりを難しいものにしている。基本給が月たった130万ルピーの役人と一丸となってやってゆかなければならないのだからとSuhartono氏は言う。
ProFaunaによると、最近の調査でスマトラ北部のメダンで森林省の役人が密輸業者として夜のアルバイトをしていたことが判明したという。また、2007年のProFaunaの別の調査では密輸取引の証拠として押収し保管していた象牙を省の役人が売りさばいていたことが明らかになったという。
http://afp.google.com/article/ALeqM5jC2dbB5_vi0Er2FnysmglnS9VYNQ
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