インドの自然保護論者、増大する昆虫密猟者にいらいら
VOA.comニュース スティーブ・ハーマン記 2008年8月26日 ニューデリー
(翻訳協力:松永裕美・編集協力:戸川久美)
南アジアの自然保護論者が、増加する昆虫の違法取引に対し警鐘を鳴らし始めている。VOA(ヴォイス・オブ・アメリカ)の記者、スティーブ・ハーマン氏のニューデリーの記事によると、、疑うことの知らない村の子供たちから小額で買われた数種の珍しい昆虫が、海外で大きな利益をもたらすことになるという。
アジアでのトラ、ライオン、サイの密猟はよく知られている問題だ。しかし今や自然保護活動家たちは、犯罪がらみのネットで捕らえられる小型の野生生物について、懸念を表している。
同地域の昆虫の多くが、プラスティックのキーホルダーやペーパーウェイトに入れられ、グリーティングカードに収められ、きれいで珍しい虫を人々が欲しがるために殺されている。ある種の甲虫のエキスは、アジアやラテンアメリカの一部で代々、漢方薬として用いられている。昆虫のなかには、生きているのでも死んでいるのでも、世界の裕福なコレクターから、数千ドルで買われるような種もある。
インドで昆虫の密猟事件は毎年数件にすぎないが、インドの野生生物の専門家は、違法取引は総体的には極めて多いと確信している。識者は、密輸業者が数千匹の昆虫を所持している可能性があると言う。
「チョウや昆虫の違法取引は、急成長の一大ビジネスになりつつある」野生生物の取引をモニタリングする組織、TRAFFICインドの責任者、Khalid Pasha氏は語る。
この問題は、最近、チェコ共和国から来た2名の調査員が逮捕されたことにより、露見するようになった。彼らは、数百匹の珍しいチョウ、蚊、甲虫の標本とともに逮捕されたときに、自分たちが西ベンガルの国立公園にいるということに気づかなかった、と言う。
インドの森林当局は、外国人が、現地当局の言う「利益をもたらす生物的海賊行為」として、調査団を利用している、と述べている。
近年、北はネパールやインドのシッキム、南はケララまで、日本人、ロシア人、フランス人が、同様な種を捕獲したことにより逮捕されてきた。
このような昆虫を許可なく収集することは、インドの法律では重大な犯罪であり、判決を受けた者は、禁固刑に処される。
Khalid Pasha氏のウッタランチャル州からの言によると、大型の哺乳類の組織化された密猟と違い、外国人密輸業者のための昆虫採集で報酬を得ている村人たちは、自分のしていることが違法だと言う自覚がない。
「それは極めて計画的なやり方で行われ、非常に特殊なグループをターゲットにしている」Pasha氏は説明する。「昆虫を収集する人々は、不法にここにやって来る。写真も持っている。村の子どもたちを呼び集め、写真を見せては、誰かがチョウや昆虫を採ってきたら、11円や22円(5ルピーや10ルピー 2008年9月29日 12:25現在)といったわずかな金をやる」
ダージリンの自然保護論者のSuman Rai氏は、同地域の動物相に関してはほとんど知られていないため、この環境の昆虫の密猟が与える影響を、正確に見積もることは難しいと言う。
「東ヒマラヤにはまだ未踏の地域が多くある。絶滅の危機に瀕しているのか、その前兆があるのかを見極めるのも非常に難しい種もいくつかある」Rai氏は言う。
インド当局は、昆虫密猟者と戦うのは、密輸された哺乳類の死骸を押収するより難しいと言う。小さな生き物は、個人の旅行用バッグに簡単に隠せるからだ。
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