WWFの報告より――大手製紙企業APP社(アジアパルプアンドペーパー社)が建設中の道路はスマトラ島森林の動物生息地を破壊する。
WWF 2008年1月8日
「法的に問題のある」道路が、先住民と絶滅の恐れのあるトラやオラウータンにとって安息の地である森林を脅かしている。
ワシントン発――世界自然保護基金(WWF)は2008年1月8日発表の調査報告において、大手製紙企業アジアパルプアンドペーパー社(APP社)とその関連企業が伐木搬出用車両のために大規模な道路を建設中であり、インドネシアで最も重要な森林の1つが脅威にさらされていることを明らかにした。WWFが「法的に問題がある」と報じるこの道路の建設により、2つの先住部族が居住し、絶滅の恐れのあるゾウ、トラ、オラウータンの生息地であるスマトラ島の最後に残る大規模森林区画の1つは分断されることになる。
スマトラ島中央部に位置するブキ・ティガプル森林区域は、250種を超える哺乳類および鳥類が生息し、世界中で最も生物多様性に富む地域である。ここはさらにオラウータンを野生に戻すプロジェクトが成功している地域である。これらのオラウータンは現在保護地区に提案された区域に生息しているが、この保護地区でも既にAPP関連企業による伐採が進んでいる。
WWFのボルネオ・スマトラプログラム(Borneo and Sumatra Program)のディレクターAdam Tomasek氏は述べる。「APP社は、原材料を安く手に入れるために生態系を完全に無視しています。世界中にある同社の取引先は、同社に対し、責任を持ってこの森林を管理し、ここに住む野生動物と先住民を保護するよう働きかけるべきです」
ジャンビ州にあるAPP社パルプ工場までのトラックによる伐木運搬を容易にするこの道路の建設は、隣接するリアウ州で同社の伐採事業が警察による違法捜査ために2006年に中止された後に開始された。APP社の関連企業はブキ・ティガプル地域で約50000エーカー(約20000ヘクタール)の自然林を伐採しており、この中にインドネシアの法律に違反する伐採が含まれていることは明らかである。
「私たちは、APP社と関連企業に対し、自然林の伐採に先立って、生態学的、環境的、文化的に保存する価値を明確に評価し、これらの森林から伐採された木材の取引を中止することを強く求めています。政府に対しても、インドネシアの法律や規制に反する森林伐採を完全に撲滅するよう要請しています」Tomasek氏は言う。
調査では、APP社の関連企業が数百エーカーの森林を許可や専門的評価あるいは利害関係者との協議の無いまま伐採しているという証拠が見つかり、インドネシアの法律に違反していることが指摘されている。伐採中の区域の一部は、最近150年ぶりに野生に戻された約90頭のスマトラオラウータンの生息地である指定特別保護区内にある。
さらに、この区域に居住する2つの先住民部族のうち1部族はスマトラ島の他の区域では発見されていない。ここは2006年に、トラの研究者の国際チームによって、トラの保護地域として国際的に優先すべきわずか20区域の1つとしても指定されている。
http://www.worldwildlife.org/news/pubs/btp_investigation_jan_2008.pdf
(翻訳協力:吉田眞貴子・編集協力:戸川久美)
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