ケニヤの動物保護区でライオンとカバが被毒
National Geographic News Nick Wadhams記 2008年5月2日 ナイロビ
ケニヤで有名なマサイマラ国立保護区のカバ数頭と4頭をくだらぬライオンが、強力な農薬を摂取して死亡したと、自然保護活動家たちが言う。
非営利自然保護団体WildlifeDirectによると、カバはカルボフランという農薬に汚染された草を食べており、ライオンはそのうち1頭のカバの死体を食べ半身不随になった。(WildlifeDirectは『National Geographic News』を所有するNational Geographic societyから一部援助を受けている。)同団体は、そのカバの死骸と (安楽死させた) 1頭のライオンにカルボフラン残留の検査反応が出たとの声明を発表。
自然保護活動家たちは、放牧をしている人が家畜を餌食にする肉食動物を排除するため、カルボフランの使用を増やしていることを懸念する。(関連記事:『ウガンダの自然保護区でライオンとハイエナが中毒死』2007年8月20日)「被毒事例の発生はケニヤの野生生物にとって重大な脅威だ、とりわけカルボフランの使用が」(同団体)
強烈な毒性
カルボフランが動物に対し強烈な毒性をもつことから、欧米ではその使用を厳しく制限している。動物が粒状のカルボフランを植物の種と誤認する可能性がある。しかし、「Furadan」の商品名で販売されているこの農薬は安価で、ケニヤではどこでも手に入る。WildlifeDirectの事例証拠は、ケニヤでカルボフランが不適切に使用されていることを示唆する。たとえば、同団体によると、カルボフランは作物の収穫90日以上前にまくものであるのに、農業従事者は農薬を浴びることによる健康上の理由から、作物の収穫30日前にカルボフランを使っている。農薬容器のラベルに人的毒性についての警告もなければ、使用法の説明もない。
人体内に短期間吸収された場合の症状には、吐き気、頭痛、衰弱、目のかすみなどがあり、長期吸収の場合には神経系や生殖器系に支障をきたす場合がある。
ケニヤではカルボフランがいろいろな鳥やその他の動物を絶滅させたのではないかと疑われ続けてきた。わかっているカルボフラン被毒事例で最悪の一つは2004年のもので、187羽のハゲワシと数頭のハイエナがこの農薬で死んだことが明らかだった。
「市場へ行くと見栄えのよい青果物がならんでいます」と、WildlifeDirectの保護部門の責任者Paula Kahumbuさんが言う。「葉っぱが青々輝き虫食い跡が一つもありません。この農薬がよく効く証拠です」(Kahumbuさん)
「この農薬についての指導がないことから乱用がまかり通っています。よく効くから使うのですが、健康上の懸念があることを認識していないようです」と、Kahumbuさんは語る。
筋が通らぬ話
米国フィラデルフィアに本拠を置くカルボフランを製造するFMC Corporationは、WildlifeDirectの主張を不適切な使用によるものだと否定し、同社に責任はないと言った。ケニヤでの「Furadan」の販売代理店であるJuanco SPSも、マサイマラでのカバの死因がカルボフランであることを否定する。「中毒死の主張はまったく筋が通らぬ話だし、その不合理さを実証する独自のデータがわれわれの方にある」と、Juanco社の園芸部門責任者Julius Gatembo氏は言う。「カバのことについて、彼らが言っているようになる訳がない。カバを殺そうと思えばおそらく「Furadan」を一度に300から500㎏摂取させる必要がある。とうてい不可能です」
2006年にFMC社は、米国環境保護局が「カルボフランの危険性を誇張し、それがとくに農業のためになることを過小評価している」と異を唱えた。それに同社は、カルボフランは正しく使用さえすれば、「理屈に合わない危険をもたらすことはない」と付け加えた。
最大の脅威
家畜を餌食にするライオンやハイエナなどの肉食動物を殺すために、ケニヤでカルボフランの使用が増えていると自然保護活動家たちは言う。マサイ族をはじめとする放牧家は殺された家畜の死骸にカルボフランをまく。家畜を殺したライオンは戻ってきて死骸を食い、そのあと命を落とす。「放牧するものにとって家畜はそれがすべてだから、ケダモノにわが子のような牛を殺されると、時間をかけ息子や知人にその畜生を探しださせ殺そうとは思わないものです」と、保護団体Living With Lionsの理事長Laurence Frank氏は話す。(Frank氏のプロジェクトの中に一部National Geographies Conservation TrustとCommittee for Research and Explorationから資金援助を受けているものがある。)被毒はケニヤのライオンにとって最大の脅威の一つである(Frank氏)。
信頼できるライオンのセンサスデータはないが、科学者の推定によると2000の固体数が生存している。しかし、1970年代の1万頭からの減少である。Frank氏が恐れているのは、ケニヤの一部の地域ですでに小さく分かれてしまったライオンの個体群が、5年以内にいなくなることだ。(関連記事:『ライオンの殺害でケニヤの一部で死滅の恐れ加速』2006年5月22日)
カルボフラン使用禁止
WildlifeDirect議長でありケニヤWildlife Serviceの前理事長Richard Leakey氏は、ケニヤでのカルボフラン使用禁止を呼びかけた。しかし、禁止の可能性は見込み薄のようだ。Juanco社も含む化学会社数社が加盟するケニヤ農薬協会(The Agrochemicals Association of Kenya)は、禁止をする法律に反対の立場だ。同協会の代表責任者Richard Sikuku氏は、カルボフランによる動物の死に関するコメントを差し控えた。しかし、カルボフランの悪影響の注意喚起のため最近Leakey氏が呼びかけて開いた会議について、同氏は憤りを感じていると言った。「こんなふうになったと言っているが実際はそんなふうになっていないのに、なったということを話題にしているのはまことに残念だ」(同氏)
http://news.nationalgeographic.com/news/2008/05/080502-poisoned-lions.html
(翻訳協力:桝井二郎・編集協力:戸川久美)
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